研究課題/領域番号 |
23560073
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
東平 光生 東京理科大学, 理工学部, 教授 (50246691)
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キーワード | 積分方程式 / 高速解法 / 係数行列フリー / 散乱解析 / 散乱逆解析 |
研究概要 |
係数行列を不要とする新たな積分方程式の高速解法として,当該年度のGreenの定理に基づく表現定理に着目し, 表面力のGreen関数を含む境界積分と体積積分の両者を含む積分方程式に着目した.ここでは,境界積分を境界に直交する局所座標系のデルタ関数を定義することで,積分方程式を領域積分に変換した.そして,この方程式にFourier変換と逆変換を反復的に繰り返すことで積分方程式の解を求める手法を展開した.手法の妥当性の検証のために,全無限の弾性波動場における散乱解析を行った.数値解析結果によれば,境界積分に表面力のGreen関数が現れる場合でも精度の良い解が得られることが分かった.これらの研究成果は 国際学術雑誌coupled system mechanics vol. 2 pp. 183-204に掲載されている. 展開途上にある,この積分方程式法のもう一つの重要なアプリケーションは散乱逆解析にある.Fourier積分変換された積分方程式は波動場と媒質の変動領域や内部の境界の情報を数学的に分離することが可能となるためである.半無限弾性波動場の内部に埋め込まれた媒質の変動領域の推定のために,この積分方程式法を適用するための定式を行い,数値解析を実行した.散乱逆解析のための積分方程式は,これまでの既存の手法と同様に第1種のFredholm方程式となり,数値解析の結果,解の収束に問題があることが分かった.これを解決するためTikhonovの正則化を適用し,あらためて数値解析を実行したところ,散乱逆解析はかなりの精度で行えることが分かってきた.これらの結果はジョージア工科大学で開かれたSES2012と国内で開かれた理論応用力学講演会にて発表している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
弾性波動場における境界積分項と領域積分項が現れる方程式に対して,Fourier積分方程式を適用し,係数行列を導出することなく,方程式を解くことができることが実証できたことは大きな成果であり.それが国際学術雑誌に掲載されたことで,研究は概ね順調に推移しているものと考える.また,この方法の延長上にある半無限弾性波動場における散乱逆解析手法を結果を整理し,国際雑誌に公表することは今後に残されており,この意味では大幅に当初の計画より進んでいるとは言えないと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
係数行列フリーの積分方程式法を半無限弾性波動場の散乱逆解析手法の展開を整理し,さらに数値計算計算結果をまとめてゆく.前年までに解析プログラムのMPI並列化が概ね完了しており,多数のテスト計算を短時間で行えることが可能になっている.多数のテスト計算を通して,どのような場合に解析精度が向上するかと言った問題.多数のソースから媒質の変動領域に波動を照射し媒質の変動領域を再構成する問題に取り組む.また,申請研究の最終年度に当たるため,散乱解析ならびに逆解析の手法や結果についてもまとめて,改めて論文 を公表しなければならないと考えている.
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次年度の研究費の使用計画 |
海外での研究発表 (BEM2013) ならびに研究室保有の3つのworksationで用いるFortranコンパイラのライセンス料(3件),英文論文の校閲料などがほとんどを占めることになると考えている.
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