研究課題/領域番号 |
23560076
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
黒田 雅治 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノシステム研究部門, 主任研究員 (60344222)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 物理数学 / ダイナミクス / 運動方程式 / 制御工学 |
研究概要 |
工学的、特に機械力学的な応用を考えると、使えるセンサは、変位センサ、歪センサ、速度計、加速度計に絞ってもよいだろう。原理検証のための実験としては極力シンプルな系が望ましく、取り扱いが容易でその動的挙動について詳細が明らかなカンチレバー(片持ち梁)を実験対象とし、非整数階微積分応答の計測について検討した。 当該研究で新しく提案する「マルチセンサ法」とは、付加的な特殊なアナログ・デバイスやデジタル・フィルタ処理などを必要とせず、既存のセンサを用いて、構造物上の複数点での整数階微分(あるいは積分)応答から、それら応答信号の実係数の線形結合として、ある1点でのフラクショナル微分(あるいは積分)応答を求める手法である。 平成23年度は、カンチレバーの振動に関する分数階(有理数階)の微分応答を測定することを目標とした。例えば、(1/n)階(ここでnは自然数)微分応答としよう。まず、系を記述する運動方程式を状態空間表示した時に現れるシステム行列Aを用いてマルチセンサ法のための拡大システム行列を求める必要がある。しかし、システム行列Aをn乗すべきか(1/n)乗すべきか、再検討が必要であった。(1/n)乗する場合、必ずしも行列Aのn乗根に相当する行列が求まるとは限らない。これはマルチセンサ法の実現において想定済みの課題であった。問題は、n乗するのが正しい場合で、(1/n)乗する場合と比べて、ある点での(1/n)階微分応答が複数の点での整数階微分応答の実係数の1次結合で表されるか否かについて検討する必要があった。 しかし、行列Aのn乗を求めるのは比較的容易であるので、実験装置の製作において問題にはならないと判断した。したがって、システム行列Aをn乗すべき場合にも(1/n)乗すべき場合にも対応できる実験装置を作る必要があることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初設計における問題点を洗い出すなど設計に十分な時間を掛けたため、実験装置の製作が1年間では追いつかなかった。
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今後の研究の推進方策 |
実験装置の設計における問題点に関しては平成23年度に十分に対策を練ったので、平成24年度は実験装置の完成を最優先に進める。振動する柔軟構造物のフラクショナル微分応答をマルチセンサ法によって計測する。さらに、フラクショナル微分応答のフィードバックに基づく最適制御を実現する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度に洗い出した問題点を解決した上で実験装置を制作し、実験データを蓄積するために使用する。
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