研究課題/領域番号 |
23560076
|
研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
黒田 雅治 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60344222)
|
キーワード | Grunwald-Letnikovの定義 / 1/2階微分 / 粘弾性体 / 振動制御 |
研究概要 |
本年度は、薄肉の片持ち梁の振動制御問題を取り上げて、制御系の構築方法について明らかにする。 Riemann-Liouvilleの定義、Caputoの定義など非整数階微分の定義はいくつかあるが、実験でサンプリングした時系列信号をそのまま利用しやすいGrunwald-Letnikovの定義をここでは採用する。ただし、Grunwald-Letnikovの定義には極限操作あるいは無限個の総和という数学的操作が含まれているが、工学的にはこれは実現不可能であるので、実験や数値解析においては、微小ではあるが有限の大きさの時間刻み幅と、大きな数ではあるがやはり有限個の総和をもってそれらを代用する。 まず、実験対象である片持ち梁の諸元は長さ285 mm、幅20 mm、厚さ0.60 mmで、材質はアルミニウム合金 (A5052)を用いた。実験では、動電型加振器を用いて片持ち梁の支持部を変位加振し、片持ち梁の変位応答をレーザ変位計によって検出し、Grunwald-Letnikovの定義に基づく近似式がプログラム化されてインストールされている制御器用デジタルシグナルプロセッサにその変位信号を取り込んで非整数階微分を実行し、最後にその非整数階微分応答信号に基づいてピエゾ素子アクチュエータを駆動することで、構造物の振動をフィードバック制御する。 現在、オフラインではあるが、1/2階微分応答信号を求めることができた段階である。 粘弾性体の動特性が1/2階あるいは3/2階の時間微分で特徴づけられることが知られているが、粘弾性体を用いることができない環境や条件下にて、分数階微分フィードバック制御にてその動特性を代替実現することができる。もちろん、非整数階微分の階数を変化させることによって、粘弾性材料が自然に備えている減衰効果以外にも、人為的に設計したダンピング特性を実装することができる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
想定していなかった制御器の安定性解析に関して予想外に長い時間を取られ、その結果、センサシステムの構築がずれ込み、アクチュエータシステムの設計製作に取り掛かるのが大幅に遅くなった。具体的には、制御用アクチュエータの設計製作が期限に間に合わず、制御実験が全く遂行できていない。
|
今後の研究の推進方策 |
制御用アクチュエータを完成させるために研究予算を使用することで、当初計画通りの実験を完遂する。従来のPID制御と比較して、分数階微分フィードバック制御の優位性を実験的に検証する。また、国内外での学会発表を通じて、研究成果の積極的普及を図る。
|
次年度の研究費の使用計画 |
想定していなかった制御器の安定性解析に関して予想外に長い時間を取られ、その結果、センサシステムの構築がずれ込み、アクチュエータシステムの設計製作に取り掛かるのが大幅に遅くなった。具体的には、制御用アクチュエータの設計製作が期限に間に合わず、制御実験が全く遂行できていない。そのため、計画していた研究成果の発信のための国内外の学会発表も全く不十分なままである。以上のような状況から、未使用額が発生した。 制御用アクチュエータを完成させるために研究予算を使用することで、当初計画通りの実験を完遂する。また、国内外での学会発表のための旅費を確保することで、研究成果の積極的普及を図る。
|