まず、分数階微積分の定義式を離散化することで、アルゴリズム化した。そのアルゴリズムをデジタル信号処理器(DSP)にダウンロードすることにより、センサからのアナログ信号を分数階微積分できるようにした。 つぎに、このアルゴリズムと1つのセンサを用いて分数階微分センサを実現した(1センサ法)。一方、複数のセンサを用いて、その出力信号の一次結合から分数階微分応答を求める手法も構築した(複数センサ法)。1センサ法では、センサは1つで済む長所があるが、アルゴリズムは複雑になり、長大なタップ数を要するFIRフィルタによる実装形態から、DSPには高速演算性能が求められる短所がある。それに対して、複数センサ法では、センサを複数必要とする短所があるが、計算アルゴリズム自体は簡単な積和演算であり、DSPに高性能さは必要としない長所がある。 最後に、非整数階微分応答のPIDフィードバックを用いて、柔軟片持ち梁の振動制御実験を行なった。片持ち梁上に設置した複数の加速度計から求めた変位と速度の情報から、複数センサ法で分数階微分応答を計測した。その結果,構造物に付けるセンサの配置によって測定精度が変化することが判明した。また、片持ち梁の先端におもりを付加して、パラメータ変動を与えた。通常の(つまり、整数階の)PIDフィードバックと比較して、分数階PID制御は、同等の制御性能を達成しつつ、制御対象のパラメータ変動に対して安定性を損なうことの無いロバスト安定性を備えていることが実験より判明した。
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