研究課題
平成24年度は,もみ殻や大豆皮等の炭化焼成粉体とプラスチック繊維や補強繊維のみでなく,安定した電磁波遮へい性を広い周波数域で達成するために,金属繊維をある程度の割合で混合した複合材料を製造して特性を評価した.その結果,(1)低周波数域であるラジオ周波数帯での磁波遮へい性では,企業が求める60dBを超える良好な特性を得られるようになった.この60dBの特性は,たとえば電気自動車に搭載する電池周囲の電磁波遮へい性として求められる値であり,実用化に耐えられる特性が得られたことになる.金属繊維と天然由来の焼成粉体の割合は,それぞれ15wt.%程度ずつの混合で60dBを超える十分な特性が得らた.この混合割合は,可能な範囲で少量に抑え,さらには高価な金属繊維の使用量をとくに低減することが求められている.(2)車に搭載することを念頭に置いた大型の試料を製造する手法について,連携企業と共同で検討し,試作品を自動車関連会社に提出し,性能評価した.その結果,試料を切り貼りして成形するするのではなく,全体を一体で成形しないと導電性が低下することから,求める特性にならないことが分かった.(3)電磁波遮へい性とともに重要な電磁波の吸収性についても基本特性の評価を進めた.吸収特性については,2GHz~8GHzの周波数領域での測定を中心に行った.高導電性の試料では表面で電磁波を反射してしまうことから,吸収性は低くなったが,導電性を調整すると40dBを超える電磁波吸収特性が得られた.この特性も実用化の範囲にある.また,材料の物性値である誘電率を測定し,その評価結果から,電磁波の吸収特性を推定する手法について,多くの知見が得られた.
1: 当初の計画以上に進展している
平成24度も,引き続き大学と連携企業間の連携が良好に維持され,さらに特性評価を共同で実施している工業試験場や大学との意思疎通がスムーズに展開でき,計画以上の成果が得られた.企業との連携では,広島市周辺の企業との連携を保ち,実用化を目指して特性改善に臨むことができた.また,誘電率の測定に関して多くの知見が兵庫県立大学の研究者から得ることができ,研究が大きく進展した.
平成25年度は,これまで主に検討してきたもみ殻と大豆皮に加えて,落花生皮の使用を検討する.落花生皮については,これまで基礎研究を実施してきたが,焼成後の炭素含有量が他の天然素材由来焼成材よりも高く,高い導電性が得られることから,本年度から本格的に電磁波遮蔽・吸収材としての可能性を検討する.また,これまでと同様に特性を把握したのち,適宜金属繊維等との複合組織化を検討していくこととする.具体的には,(1)低周波数域であるラジオ周波数帯での磁波遮蔽性では,企業が求める60dBを超える良好な特性が得られるかを検討する.落花生皮を使うことで,より少量の添加量での目標値達成できるかや,射出成型での試料製造法への応用展開が可能か等の検討を進める.(2)車に搭載することを念頭に置いた大型の試料を製造する手法について,連携企業と共同で検討し,試作品を自動車関連会社に提出し,性能評価する.(3)電磁波の吸収性についても基本特性の評価を進め,とくに,材料の物性値である誘電率を測定し,その評価結果から,落花生皮を含めた天然素材由来の焼成粉体の電磁波吸収材としての可能性等について検討を進める.
次年度使用額が\1,051,459円あり,今年度は直接経費\700,000円,間接経費\300,000円である.したがって,今年度使用可能な直接経費合計額は\1,751,459円である.そこで,以下の使用計画とした.(1)物品費; 551,459円 ;試料作製費等(2)旅費; 400,000円 ;打合せ出張費,学会参加出張費(3)謝金; 400,000円 ;実験補助(4)その他; 400,000円 ;測定委託料等
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