研究課題/領域番号 |
23560082
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
荒居 善雄 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (70175959)
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研究分担者 |
荒木 稚子 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (40359691)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 太陽電池 / 材料力学 / 量子ドット / 超格子 / ひずみバンド |
研究概要 |
本研究では、量子ドット型多層膜太陽電池に発生するひずみを高精度に予測する解析技術の開発を目的としている。電池の作成過程に関しては、量子ドット型多層膜太陽電池を構成する候補材の結晶界面近傍のひずみに及ぼす異種原子結合の影響を、歪誘起ポテンシャル変化に注目して、定量的に明らかにする。光-電気エネルギー変換過程に関しては、結晶のひずみによってエネルギーバンドが変化することの逆過程として、結晶中の価電子が光のエネルギーを吸収して励起状態になる際に電子状態の変化に起因して発生する格子ひずみを評価する理論的枠組みを明らかにする。原子論的な取り扱いにおいて明らかにしたそれぞれの効果を連続体の力学に組み込み、ひずみ誘起ポテンシャル変化と光エネルギー吸収起因ひずみを考慮可能な界面モデルを、界面弾性係数の定義および新規な非弾性ひずみを定義することにより、開発する。開発した界面モデルを用いて、量子ドット型多層膜太陽電池のひずみシミュレーションを行い、ひずみ解析結果に基づく発電効率最適化に対する指針を提案する。 平成23年度においては、主に界面部の原子結合の離散系によるモデル化を行った。第一原理電子状態計算は、申請設備備品である並列計算機を用い、ソフトウェアAbinitによって行った。第一原理電子状態計算法を用い、量子ドット型多層膜太陽電池に用いられる候補材同士の結晶界面をモデル化し、巨視的ひずみを受ける場合の界面近傍の格子のひずみ応答を計算した。具体的な材料組み合わせとしては量子ドット型多層膜太陽電池の開発が進められつつあるInGaAs/GaAs量子ドットを想定した。 有限要素法を用いて、量子ドットを含む面を周期的に有する多層膜について、格子不整合による弾性ひずみを計算した。同時に、エネルギーバンドの計算を行い、界面と巨視的ひずみ成分の存在によるエネルギーバンドの変化を調べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
界面部の原子結合の離散系によるモデル化については、第一原理電子状態計算を行うために、申請設備備品である並列計算機を選定し、設置を行った。さらに、当該装置上に、ソフトウェアAbinitをインストールし、並列計算が可能な状態とした。以上のことは、達成度として評価すると、50%程度に相当する。さらに、第一原理電子状態計算法を用い、量子ドット型多層膜太陽電池に用いられる候補材同士の結晶界面をモデル化したユニットセルについて緩和計算を実施した。具体的な材料組み合わせとしては量子ドット型多層膜太陽電池の開発が進められつつあるInGaAs/GaAs量子ドットを想定した。以上のことは、達成度として評価すると、15%程度に相当する。緩和計算結果に基づき、格子不整合ひずみによる弾性ひずみを計算した。生じた変形を連続体力学的に模擬する目的で、集中力列を配置したモデルを考案した。巨視的ひずみを受ける場合の界面近傍の格子のひずみ応答を計算した。有限要素法を用いて、量子ドットを含む面を周期的に有する多層膜について、格子不整合による弾性ひずみを計算した。同時に、エネルギーバンドの計算を行い、界面と巨視的ひずみ成分の存在によるエネルギーバンドの変化を調べた。以上のことは、達成度として評価すると、15%程度に相当する。これらを合計すれば、全体として80%程度の達成度に達していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、界面部の原子結合の離散系による計算を実施する。界面部が外部から巨視的ひずみをうける場合について緩和計算を実施し、原子位置の変化を計算する。 界面部の原子結合の連続体によるモデル化を行う。第一原理計算で得られた界面近傍の特性をマイクロメカニックスの手法(界面連続体モデルやeigenひずみ等の非弾性ひずみ法)を用いて連続体力学に導入する方法を開発する。 界面部のひずみ応答については、界面弾性係数を用いてモデル化する。第一原理電子状態計算結果から界面弾性係数を算出する方法を開発する。ひずみ誘起ポテンシャル変化については、巨視的、均一な結晶におけるBir-Pikus理論を界面部に応用する方法を開発する。光吸収による格子ひずみ発生については、eigenひずみ法を応用した新たな非弾性ひずみを用いる方法を開発する。開発したモデルを、三次元無限体中の球状介在物問題に適用し、その有効性を明らかにする。 連続体によるモデル化は、Mathematicaソフトウェアによって数式処理を行い、結果の表示をTecplotソフトウェアで行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
連続体によるモデル化を数式処理で行うために、Mathematicaソフトウェアを購入する。また、結果の表示を行うためにTecplotソフトウェアを購入する。以上のソフトウェアを利用するためのパーソナルコンピューターやその周辺機器を購入する。23年度に行った研究成果を学会で発表する為の参加登録費および旅費に使用する。23年度に行った研究成果を論文として公表する為の投稿料として使用する。関連分野の最新の情報を入手するための文献や書籍の購入のために使用する。
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