研究課題/領域番号 |
23560083
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
石原 外美 富山大学, 理工学研究部, 教授 (60019221)
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キーワード | 機械・材料 / 疲労 / 信頼性 / 極値統計学 |
研究概要 |
当該年度においては,マグネシウム合金の種々の応力振幅のもとで巨視貫通き裂と微小き裂を同等に扱うことを目的としたき裂伝播特性の提案と高速度工具鋼の疲労寿命の評価手法の提案を行った.以下に,それぞれ具体的に述べる. 種々の応力振幅のもとで巨視貫通き裂と微小き裂を同等に扱うことを目的としたき裂伝播特性の提案を行うため,著者が提案しているMパラメーターに必要なマグネシウム合金における材料定数の同定を行った.得られた材料定数によるMパラメーターで整理した結果は種々の応力振幅のもとで巨視貫通き裂と微小き裂を同等に扱えるということを示した.従って,マグネシウム合金における,より汎用性が高い評価手法を提案したことになり,疲労寿命を昨年度に比べてさらに簡便に(より少ない実験結果から),定量的に評価できることになった. また,切削用工具や塑性加工用工具などに用いられている高速度工具鋼の疲労寿命は昨年度マグネシウム合金を用いて提案した評価手法が適用可能か確認を行った.得られた結果から,マグネシウム合金と同様に応力比R=-1については,極値欠陥分布とき裂の伝播特性から,シミュレーションによって疲労寿命を算出し実験結果を予測できることが確認された.従って,昨年度提案した手法はマグネシウム合金以外の他の材料でも適用できる汎用性の高い評価手法であることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マグネシウム合金については,計画通り,種々の応力比のもとで疲労試験を行い,疲労寿命分布を明らかにした.ついで,き裂伝播則,き裂の発生源となる欠陥の分布特性,さらにモンテカルロシミュレーションを用いることによって,マグネシウム合金の疲労寿命分布を評価した.計算された疲労寿命分布は実験結果と良く一致した.提案した手法は種々の応力振幅のもとで巨視貫通き裂と微小き裂を同等に扱うことが可能であり,少ない実験結果から,定量的に評価できる汎用性が高い評価手法となっている. また,上記疲労寿命分布の評価法が,材料に依存しない評価法であるかを確認するために,マグネシウム合金よりも,より硬い高速度工具鋼の疲労寿命分布について研究を進め,シミュレーションによって疲労寿命を算出し実験結果を予測できることが確認された.
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今後の研究の推進方策 |
筆者が提案する本疲労寿命分布評価法が材料に依存しない評価法であることを検証するためマグネシウム合金,高速度工具鋼以外の材料でも検討を行う. これまでの研究は,回転曲げ疲労実験,並びに引張り・圧縮疲労実験であるため,次のステップでは,平面曲げ疲労実験においても,本疲労寿命評価法が有効に使用することができることを実証する必要がある.これにより,回転曲げ疲労実験,引張り・圧縮疲労実験,平面曲げ疲労実験を通して,同一の疲労寿命評価法として用いることができることを実証できる. また,試験片の形状,並びに試験片寸法が変化しても適用可能な疲労寿命評価法へと拡張する.これにより,より広範な実験条件においても使用できる疲労寿命分布評価法を確立する.
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次年度の研究費の使用計画 |
本疲労寿命分布評価法が材料に依存しない評価法であることを検証するために,アルミニウムダイキャスト材,並びに炭化物欠陥を含む高速度工具鋼を試験片素材として回転曲げ疲労実験を行う.材料のS-N線図,いくつかの応力振幅における,疲労寿命分布を調査する.そして,疲労過程の観察を行い,疲労き裂の発生箇所,発生時期,き裂の伝播特性を調査する.き裂の発生源の欠陥の分布特性も併せて調査する.試験片に存在する欠陥の分布特性とき裂の伝播特性を考慮して,疲労寿命分布を評価する.評価結果と,実験結果が一致するか否かを検討し,提案する方法が,マグネシウム合金以外の他の合金についても適用できることを確認する.
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