本研究の目的は,製造工程で発生する内部欠陥を含む構造材の疲労寿命の分布を,欠陥分布及びき裂の進展挙動を考慮して評価する方法を確立することである.そこで主にマグネシウム合金AZ61押出し材と冷間工具鋼SKD11を用いて検討を行った.以下にそれぞれの具体的な成果を述べる. マグネシウム合金AZ61押出し材を用いて,複数の応力振幅のもとで引張圧縮疲労試験を行った.実験から得られた疲労寿命曲線(S-N線図)から,各応力振幅において疲労寿命にばらつきが確認され,疲労過程の連続観察と破断面の詳細な観察から,材料に含まれている介在物が破壊の起点となっていることが明らかになった.そこで極値統計に基づき介在物の分布特性を明らかにした.き裂の進展挙動に関しては巨視貫通き裂と微小き裂を同等に扱うことを目的としたき裂伝播特性の提案を行うため,著者が提案しているMパラメーターに必要なマグネシウム合金における材料定数の同定を行った.得られた材料定数によるMパラメーターで整理した結果は種々の応力振幅のもとで巨視貫通き裂と微小き裂を同等に扱えることを示した.本研究で得られた介在物の分布特性,Mパラメーターを用いて得られる疲労寿命分布は,試験片サイズや応力比が異なる場合においても適用可能であることを実験結果との比較から実証した. 冷間工具鋼SKD11においてもマグネシウム合金と同様の検討を行った.破壊の起点は材料に含まれている炭化物であることを明らかにした.き裂進展挙動に関しても明らかにし,本研究で提案した疲労寿命分布は実験結果とよく一致することを示した. また,他の材料としてアルミニウム合金なども用いて,き裂進展挙動に深く関係するき裂閉口荷重の特徴と材料の機械的性質との関係について明らかにした.
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