研究課題/領域番号 |
23560084
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
服部 修次 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00143933)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | キャビテーション / 壊食 / 表面被覆材 / TiNi合金 |
研究概要 |
本科学研究費の研究計画では,第一段階として肉盛材料のキャビテーション壊食に及ぼすNi下地肉盛の効果について検討することにしている。次いで,成分調整しやすいように,純チタン,純ニッケルの金属粉を用いて肉盛材の作成を試み,優れた耐壊食性が得られる最適成分比及びその後の熱処理の効果を検討することを主眼としている。平成23年度は,主に肉盛材料のキャビテーション壊食に及ぼすNi下地肉盛の効果について検討した。Ni下地肉盛層は,TiNiの表面層と母材の熱膨張率の違いによる熱割れを防ぐために必要な肉盛層である。母材はSUS304,下地肉盛材料は純ニッケル粉を使用し,上面にはTiNi形状記憶合金粉体を使用した。肉盛材の被覆は本研究室に現有しているプラズマ粉体肉盛溶接装置を使用し,プラズマアーク粉体(PTA)肉盛法を用いて施工した。作成した肉盛材を試験片形状に機械加工したのちキャビテーション壊食試験を行って下地肉盛材の最適被覆厚さを検討した。対象の下地厚さは0mm~3mmとした。キャビテーション壊食試験は,ASTM G32に規定されている磁わい振動試験装置を用いて,静置試験片法で行った。試験結果は,質量減少量を材料の密度と試験面積で除したMDE(平均壊食深さ)-試験時間曲線で評価した。また,壊食過程はSEM観察により行った。得られた結果は次の通りである。(1)本研究室で導入した肉盛装置でTiNi肉盛材の試験片を容易に作成することができる。(2)0mm,2mm,3mmのNi下地肉盛厚さのTiNi肉盛材の壊食試験速度は,ほとんど変わらない。(3)Ni下地肉盛なし(肉盛厚さ0mm)のTiNi肉盛材には,熱割れが発生するので,Ni下地肉盛厚さとしては2mm~3mmが施工上適切である。本年度の研究の遂行により,Ni下地肉盛の最適厚さを決定することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成23年度の研究計画では,TiNi合金の加熱割れを防ぐための下地肉盛の検討を重点項目にし,100%実施することができた。また,純チタン,純Niの金属粉を用いてTiNi合金肉盛材を作成することができ,その一部の耐壊食性を評価することができた。平成23年度に得られた成果を,平成24年5月25日に開催されるターボ機械協会第67回総会講演会で発表し,研究討論を行う。また,平成24年9月9日~12日に金沢大学で開催される日本機械学会年次大会講演会にても研究発表及び研究討論を行い、今後の研究の推進に役立てる。さらに研究成果を日本機械学会論文集に投稿する。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進の方策としては,耐キャビテーション壊食性を向上させるために,純Ti粉及び純Ni粉を用いて,各種の割合(Ni濃度40%,50%,60%,70%,80%)で混合させた肉盛材料を使用して表面被覆を行い,耐壊食性を評価する。純Ti、純Ni混合粉の混合比率は形状記憶効果を示すTi45-Ni55を基準に数%ずつ調節し、最適な混合比率を検討する。キャビテーション壊食試験片は、オーステナイト系ステンレス鋼SUS304の母材に加熱割れ防止のため純Ni粉体で平成23年度に得られた最適の厚さ2~3mmで下地肉盛を作成する。さらにその上に純Ti粉と純Ni粉の混合粉を用いてプラズマ移行アーク粉体(PTA)肉盛法を施した材料を用いる。試験装置には,磁わい振動装置を用いて壊食試験を行い,質量減少量の継時変化を測定する。さらに,金属粉の形状観察や大きさの測定,分布の採取及び肉盛材の表面観察には,電子顕微鏡(SEM)(JEOL、 JSM-6510)を用いて観察し,壊食機構について検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
大型装置類は、平成23年度に購入している。平成24年度予算は60万円であり、研究費の使途としては、肉盛試験片母材のSUS304板材や、肉盛試験片作成後に表面を研磨するための研磨紙などの消耗品の購入に充てる。また、ターボ機械協会や日本機械学会での年次大会の発表を予定しており、旅費に充当する。
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