研究課題/領域番号 |
23560086
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
岩本 剛 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40274112)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | TRIP鋼 / 相変態 / 衝撃エネルギー / 時間的階層性 |
研究概要 |
対象とする巨視的現象が高速になると,時間スケールが小さくなり,それに付随する物理現象との時間的階層性によって,巨視的に現れる現象が大きく変化する可能性を秘めている.TRIP鋼は,塑性ひずみを加えることによって発生する,ひずみ誘起マルテンサイト変態を伴って優れた衝撃エネルギー吸収(以下 IEA)特性を持つと言われている.TRIP鋼の変形挙動は負荷速度に起因する時間スケールに依存し,付随する相変態と温度場における時間スケールと複雑に相まって,優れたIEA特性を示すと考えられるが,未だそのメカニズムは明らかになっていない.そのため,本研究では,TRIP鋼の時間的階層性を明らかにし,IEA特性が向上するメカニズムの解明を目的として,まず以下を実施した. 金属のような非常に低い抵抗を測定するためのKelvinダブルブリッジを応用した回路を開発し,測定結果の精度向上を試みた.ブリッジは試験片の抵抗を計測するために 4 つの既知抵抗およびバランス調整用可変抵抗から構成されている.ここに直流電流を供給することによって,試験片の抵抗変化を測定した.完成した回路の妥当性を示すために,まず未変形の試験片の体積抵抗率を,市販の低抵抗計およびこれまでに作成した直流電位差法による回路と併せて測定した.さらに,作成した回路の動的応答特性を検討するため,ホプキンソン棒法衝撃試験において生じる応力波の速度程度の信号が検出できることを確認した.温度場の測定に関しては,極薄熱電対を用いると,試験片への端子の固着性に優れるが,応答性に劣るため,直径80μmの極細熱電対を用いた測定に切り替えて測定を行った.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
無理のない計画と特段研究の遂行に問題がなかったことによる.
|
今後の研究の推進方策 |
平成23年度の結果を踏まえて,TRIP鋼の衝撃エネルギー吸収特性を評価するため,衝撃負荷下における破壊靱性値を評価し,そのマルチ時間スケール性を明らかにする.さらに,TRIP鋼のIEA特性を評価するために,分割式ホプキンソン棒法に基づいた衝撃3点曲げ試験装置を過去の文献に従って,新たに試作し,衝撃負荷下におけるIEA特性を調査し,保有の材料試験機と併せてIEAの時間スケール依存性を検討する.また,TRIP鋼が延性材料であることから,以下の対象となる破壊力学パラメータは J 積分である.試作した試験装置を用いて,後述する数値シミュレーションや過去の文献等を援用して動的なJ積分値を測定する.
|
次年度の研究費の使用計画 |
研究の推進方策に従って,衝撃試験装置作成ならびに破壊靭性値測定用試験片に物品費として200千円,成果発表と旅費に700千円計上し,研究の推進を計る.
|