研究課題/領域番号 |
23560089
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
木田 勝之 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00271031)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 疲労 / 非破壊検査 / 塑性変形 / 破壊 / き裂 / 磁場 |
研究概要 |
平成23年度は、「1-1. 高強度鋼の磁場分布」と「2-1. き裂領域の可視化(磁場顕微鏡による修復領域の可視化)」の項目に対して研究を行った。 「1-1. 高強度鋼の磁場分布」では、対象となる試験片に対して、コイルによる消磁を行った後、40 MGOeの磁石を用いて、試験片の測定位置のみに着磁を行った。この着磁領域に対して、磁束密度変化を測定した。この結果、1mm×1mmの面積をもつ磁石による着磁の場合、4mm×4mmの領域にS極とN極が発生することが分かった。また、測定時の試験片と磁場センターの距離は350μmにまで接近させた状態で、磁極の3軸成分を分離して測定することに成功した。全成分から計算された磁場の強度は約200μTであった。さらに、1垂直成分のみに絞り込んだ場合は、200μmからの磁極の強度の減少曲線を測定することができた。このように、マイクロテスラレベルの小さな磁場でも磁極や着磁位置から離れるに従って変化する磁場の様子を正確に測定できることを示した。 「2-1. き裂領域の可視化(磁場顕微鏡による修復領域の可視化)」では、き裂周辺の電子線観察(組織構造の観察)と塑性変形挙動のX線観察、硬さ変化の観察結果を行った。Hv200の鋼とHv400の鋼を用いて、応力負荷前後の磁場の変化を測定した。その結果、磁場のすべての成分は減少すること、同じ応力でも硬い材料の方が、減少の割合は小さいことが分かった。また、き裂進展時の磁場変化についてのデータを測定し、応力拡大係数との比較を行った。 このように、磁場顕微鏡は平面観察のみならず、3次元のセンサー移動が可能であること、顕微鏡に走査アルゴリズムを付け加えることにより、き裂進展に追随して、測定位置を変更できるようにした。これにより、き裂進展時の3次元磁場の変化が測定可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
「1-1. 高強度鋼の磁場分布」では、マイクロテスラレベルの小さな磁場でも磁極や着磁位置から離れるに従って変化する磁場の様子を正確に測定できることを示した。本課題は、「1.ホール素子による観察技術の確立」の1番目の課題であり、最終目標である、「高強度鋼の状態を常温大気中で検査し、その疲労状態を把握できる技術を開発する」までに必要なデータ取得と開発を行うことができた。「2-1. き裂領域の可視化(磁場顕微鏡による修復領域の可視化)」では、応力負荷前後の磁場の変化を測定した。また、き裂進展時の磁場変化についてのデータを測定し、応力拡大係数との比較を行った。本課題は、「2. き裂の疲労履歴評価技術」の1番目の課題であり、最終目標である、「従来は不可能だった疲労状態を知ることができる技術の一般化」に対して必要となるデータの取得を行うことができた。 平成24年度の課題「1-2. 高強度鋼の分極特性」と「2-1.き裂進展の評価」では、Scheil-Gulliver、Kobayashi and Stefanescu 理論、および、CALPHADシミュレーションソフトJMATproにより熱処理と塑性変形が構造に与える影響を解析することにより、磁場測定条件を最適化するために、H22年度のリファレンスデータをもとにして、消磁・脱磁した試験片に対し、磁場分布計測を行うが、このデータを取得することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の課題「1-2. 高強度鋼の分極特性」と「2-1.き裂進展の評価」では、Scheil-Gulliver、Kobayashi and Stefanescu 理論、および、CALPHADシミュレーションソフトJMATproにより熱処理と塑性変形が構造に与える影響を解析する。その結果と、TEMを用いた構成、微細構造を比較し、分極の形成機構を解明する。これにより、もっとも安定なき裂の観察条件を求める。磁場測定条件を最適化するために、1-2で得られた組織がき裂と磁場に与える影響を磁場分布から評価する。これにより、負荷された応力履歴を磁場測定で把握する。硬さ分布と磁場データを比較することにより、磁場データから、修復領域の安定性を評価する。工具鋼に熱処理を行う。磁化特性は脱磁用の小型装置を導入し、試験片と基準物質で構成される試料部の温度を、一定のプログラムによって変化させながら、測定する。「1-3.磁化特性とき裂観察」と「2-3.き裂の定量評価」では、き裂の進展試験を行い、き裂進展前後の基材のダメージをこれまでのデータと比較する。これによりき裂進展と磁場の関係を測定する。応力拡大係数との関係を実証する。き裂による変化は、地磁気(東京で40~45mT)と比べても小さいが、マイクロテスラ領域の磁場変化を利用することでき裂進展評価が可能である。そこで、構造や残留応力が変化する部材の様子をX線回折によりとらえ、磁場の変化の様子と比較する。また、小さいき裂における磁場変化を測定することにより、き裂が進展するかしないかを、下限界近傍で観察する。すでに常温で観察可能な磁場顕微鏡の開発には取り組んでおり、原理的な基礎課題は克服している。この原理を用いて損傷に対するマイクロテスラ領域の磁場変化挙動を測定し、構造材である高硬度鋼のき裂の進展観察を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、工具鋼の磁化と磁場の関係に関するデータの観察取り組む。 このため、試験片作製費用に研究費を充てる。装置は既存のものを用いる。費用は現在、用いている試験片費・消耗品費から算出した。また、旅費についてはチェコ、中国で行われる国際会議で磁場と応力の関係について講演するために用いる。
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