研究課題/領域番号 |
23560094
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
三村 耕司 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70181972)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 座屈荷重 / 動的負荷 / 衝撃負荷 / 弾性座屈 / 変形速度 |
研究概要 |
幅広い変形速度での長柱の動的座屈荷重に対する安全性の評価が本研究の主たる課題である。平成23年度は、3年間の研究期間の初年次に当たるが、上記の課題達成のための実験的検討は、全体計画のかなりの部分をカバーすることできた。当該研究の実施前の準備段階では、落錘式衝撃負荷試験機による秒速1m/s~5m/sまでの衝撃的な負荷のみが可能でったが、新たに油圧ピストン方式の負荷ユニットを導入することで、準静的(0.001/s)~1m/sの低速負荷試験が可能となり、幅広い変形速度域での座屈試験が可能となった。ハイスピードデジタルイメージングカメラを用いた変形解析では、低速度領域から、1次より高次のたわみモードへの移行が起こっていることが判明し、0.1m/sでは3次程度、1m/sの衝撃負荷速度では7~8次程度の高次たわみが観察でき、モードの上昇に伴って座屈荷重が増大することも分かった。これは、高速変形時には柱の横方向へのたわみ変形が慣性効果によって抑制され、たわみ量が大きな低次モードより、個々のたわみ量は少なくて済む高次モードの発現が起こりやすく、この結果、座屈に関わる正味の座屈長さが短くなる事によると考えられる。数値解析においても、実験と同様の解が得られ、動的座屈荷重の増大が高次たわみモードの発現にあることが明らかとなった。これらの知見と、動的座屈荷重-変形速度データから、動的座屈荷重の評価式を変形速度V、細長比λ、音速Cの関数として表現することに成功し、長柱の動的座屈の基礎モデルの構築を行うことができた。これらの成果は、日本機械学会、同材料学会、実験力学会、実験力学国際会議の各講演会で発表され、現在2報の学術論文として日本材料学会に投稿されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度においては、金属長柱(アルミニウム材)の高速度カメラによる変形解析を含む実験的解析と対応する数値解析の比較を予定していたが、計画通り,動的有限要素法で数値解析が可能な1m/s以上の変形速度域での両者の比較検証は良好に進み、研究実績の概要に示す知見と、成果をの公表を成すことができた。断面形状の異なる板材試験片,丸棒試験片に対する結果から,断面形状の変化、寸法の変化があっても、これらの差異は細長比を尺度として表すと,一元的に評価できることが分かった。また,高次の座屈(たわみ)モードが、座屈荷重に及ぼす影響の検証を目的とした,中間部を拘束した場合の座屈荷重の変化についての検討も行い、これらの結果を含めた成果のの整理を投稿論文の形で実施中である。
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今後の研究の推進方策 |
動的座屈荷重の評価式の提案を行っており、今後はその精度の向上、適用可能範囲の精査等を実施する必要がある。とくに、(1)動的座屈荷重に対する材料特性の依存性を明らかにすること、また、(2)平成23年度に着手した、中間部拘束時の座屈荷重の変化の検討が、意外な発展性を内包しており、この評価も重要であると考える。項目(1)については、当初の計画通りに高分子素材の長柱を対象にした実験と解析を行いたい。素材としては、入手が比較的簡単な、ポリカーボネイト材が適当と考える。項目(2)については、23年度に得られた知見から、この方面での実験結果の充実から、動的座屈荷重の安全性評価について重要な結果が得られる見通しがある。一般に長柱の中間部を拘束すると座屈長さが減少し、座屈荷重は増大する。一般の設計では、このことを利用して座屈防止の方策が練られる場合が多い。しかしながら、これまでの中間部拘束時の試験結果からは、比較的短く、静的座屈荷重の大きな試験体でも、わずか0。1m/sの変形速度でも、中間部拘束の効果が失なわれる事が明らかになってきている。これは、従来の座屈に対する安全設計の概念を大きく変えるものであり、特に、静的負荷から、中間部を拘束したことによる座屈荷重の増大が見込めなくなる遷移速度領域での安全性の確立は工業的にも非常に重要と思われる。このことを鑑みて、今後の研究の進め方として、中間部拘束の長さの影響や、拘束条件による座屈荷重の変化の検証等のさらなる発展を含めたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
今後の研究の推進方策に従って、(1)高分子材料の長柱に対する動的座屈試験の実施のための材料購入、また、動的座屈荷重の評価式の適用限界の精査のための、断面形状がより複雑(L字型,H型,□型)なアルミニウム長柱の動的座屈試験の実施のための素材購入費,加工費に合計250千円程度を計上、(2)中間部を拘束する場合の拘束長さと拘束条件を変えるための治具の加工費、及び試験体の購入費に250千円程度を計上。、(3)これらの成果の公表のための旅費について、100千円程度を計上する。
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