研究課題/領域番号 |
23560094
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
三村 耕司 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70181972)
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キーワード | 座屈荷重 / 動的負荷 / 衝撃負荷 / 弾性座屈 / 変形速度 |
研究概要 |
平成24年度は、初年度(23年度)に得られた知見の下で、以下の項目に関する検討を行い、重要な知見を得た。それぞれの検討項目で得られた研究実績は以下の通りである。 (1)高分子材など材質が大幅に異なる材料への適応性の有無:ポリカーボネイト材に対して、アルミニウム材の場合と同様の実験を高速度域で実施し、変形速度を当該材料中を伝ぱする応力波の伝播速度で除した「無次元化変形速度」を用いる事に依って、動的座屈荷重に対する材料依存性が有効に記述できることを強く示唆する結果を得た。 (2)柱の中間部を拘束した場合の座屈荷重の変化に対する変形速度の影響の解明:初年度の研究を発展させ、変形速度が上昇した場合には、長柱体に極めて高次のたわみモードが発生するため、柱の一部、或いは、その大部分を変形拘束し、自由に変形する領域が全長の20%程度にまで減少しても座屈荷重は変化しないことを示した。このような座屈荷重が中間拘束を行っても変化しない現象は,比較的低速、例えば0.1m/sの変形速度に於いて起こる事を示し、さらに、このような静的-動的遷移現象の細長比依存性を明らかにした。 (3)長柱体の両端部の支持・拘束条件に及ぼす変形速度依存性:前項の発展研究であり、初年度に検討した柱の両端が固定の条件に加え、両端回転、一端固定-他端回転の場合の座屈荷重が変形速度の上昇に伴ってどのように変化するのかを検討した。高速度カメラでの変形形態の実測に依る検討も踏まえ、変形速度が0.1~1m/sの範囲内では、どの端末条件を用いても、動的座屈荷重は同一のものとなることを明らかにし、この原因が、動的速度域で発生するたわみモードが、端末条件に関わらず同一のものとなる事にあることを示すことが出来た。このような知見は、従来のオイラーの座屈基準とは大きく異なるものとなっており、その公表は工学的に極めて重要と判断される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成24年度の当初課題は、初年度(23年度)に得られた知見の下で、(1)高分子(ポリカーボネイト)など材質が大幅に異なる材料への適応の有無 (2)柱の中間部を拘束した場合の座屈荷重の変化に対する変形速度の影響の解明、(3)断面形状の複雑な部材への適用の可能性の検証、を設定した。 項目(1)及び(2)の検討は順調に進み、重要な知見が得られた。但し、項目(3)については、初年度に着手した項目(2)の技術が効率的に発展出来ることが判明し、項目(3)の代わりに,工学的には非常に重要かつ有用と考えられるが、その実験的検証が、実験原理的に極めて困難と思われた「長柱体の両端部の支持・拘束条件に及ぼす変形速度依存性についての検討」に研究内容を変更し,極めて大きな成果が得られた。これらの一連の成果は、平成24年11月に日本材料学会誌「材料」に一部掲載、平成25年度に日本実験力学会、日本材料学会への投稿論文として準備中である。また、平成25年9月に開催予定の「衝撃工学に関する国際会議(ISIE2013)」において発表予定となっている。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、研究の最終年度に当たるので、これまでの一連の研究成果を整理し、国内外への公表を図る予定である。また、平成23~24年度の対外発表での質疑応答の過程から、「極めて大型の長柱体であっても、現在行っている試験体と細長比が同じであれば、その座屈荷重に対する変形速度の影響は同じか」との課題が浮かび上がり、将来、このような課題を厳密に検証するための知見を得るために、現状の試験装置で、逆に寸法がより小さな、しかしながら、現状と同一の細長比を持つ小型長柱体の座屈荷重の変形速度依存性を検証する実験を予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
国際会議への論文投稿/参加経費として 50,000円 国内会議での発表の為の旅費として 60,000円×2回=120,000円 動的座屈荷重の試験体寸法依存性に関する補足実験で使用する試験体50体の購入経費として63,000円 同上 試験体保持用治具の作成費として 150,000円 学会誌への論文投稿経費/報告書作成経費として 200,000円 を予定している。
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