前年度までに得られた知見によれば、長柱体の動的座屈荷重の静動比は、変形速度と無次元化量の一種である細長比によって記述可能であり、柱の寸法については相似則が成立するが、変形速度については、材質が同じものの場合、相似則が成立しないことになる。最終年度の平成25年度には、この点について以下のような確認試験を行い、その効果について検討した。 試験装置の構造的な限界から、試験体は従来のものに比べてかなり厚さの薄いものを使用し、1.0mm~3.0mmの範囲に選んだ。試験片幅については従来の試験体とほぼ同クラスのものとする。この断面形状について、従来の試験体と同様の細長比を持たせ、準静的から高速域までの幅広い速度域での試験を実施し、その座屈荷重の静動比と寸法との関係を調べた。なお、このような特殊な試験体の荷重測定を可能とするため、新たに特別なロードセル(検力ブロック)を作成した。また、平成25年度以降、OSの関係から使用できなくなるハードウェア(主として測定用のモバイルコンピューター)とその関連ソフトウェアの更新も行った。 上記の確認試験で得られた結論は以下の通りとなった。まず、動的効果が発生する速度の下限界値(以後、下限界速度と表記)については、寸法の実寸効果があり得ることが示唆された。ただし、その効果の現れ方は、従来の慣性効果によるたわみモードの高次化による説明とは一部相反する結果とも見え、今後の付加的検討の余地を残すものとなっている。 しかしながら、この効果は準静的な変形速度域から速度が上昇を始めるごく初期領域で発生し、速度効果の顕著な高速変形域での影響は限定的で、これまでに得られた知見を大幅に逸脱する結果とはならず、本研究を通して得られた動的座屈荷重の実用評価式は十分な精度で運用可能なことが示された。
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