研究課題
交通事故や転倒での被害軽減のため,生命を維持する重要な器官である頭部の保護対策をさらに進める必要があるが,頭部の傷害基準は1960年代の死体実験に基づいており,傷害評価方法は現在まで進歩していない.コンピュータシミュレーションによる応力解析は進展しているものの,発生する傷害と応力レベルとの定量的な関係や傷害発生のしきい値は分かっておらず,十分な保護対策を講じることができていない.そこで,本研究では生きた動物を用いたin vitro力学実験と厳密なin vivo衝撃実験の比較解析により,脳神経細胞と神経線維の損傷形態をミクロレベルで解析し,頭部傷害の詳細なメカニズムと傷害発生レベルを明らかにすることを目的とする. 3年計画の1年目にあたる本年度は,実験動物(豚)を用いて,回転の頭部衝撃に対する傷害を発生させるin vivo動物実験モデルの構築のため,動物実験装置の開発を実施した.頭部の回転衝撃を与えた研究例において,幼若ブタに対する実験では角速度200rad/s以上回転衝撃を頭部に負荷した際に傷害が発生しており,本研究では成体ブタの実験を行うために最大角速度は300rad/sを設計目標とした装置を試作した.組織観察においては,脳が損傷した際に細胞体から出現するにアミロイドβ 前駆体蛋白(β-APP)に注目し,免疫組織科学染色を用いることにより,衝撃でβ-APP を検出する方法を検討を実施した.なお,本研究の実施にあたっては,日本大学動物実験委員会の倫理承認手続きを実施し,「頭部および胸腹部の傷害メカニズムに関する研究」と題した動物実験倫理委員会の審査を受け,平成23年11月15日に承認番号:AP11E003号として実施承認を得た.
2: おおむね順調に進展している
頭部外傷の中で回転衝撃を再現するために,動物寸法の測定,他の研究例に基づく衝撃エネルギの設定検討,実験装置の製造までを実施できている.また,染色解析についてもその方法について詳細な検討を実施できている.以上より,当初の予定をおおむね順調に進展できていると判断している.
動物への回転を中心とした衝撃実験を実施し,これによって生じるミクロな脳損傷を観察し,工学的な定量解析を実施する.
神経細胞や神経軸索の染色解析のための薬品類,衝撃計測用ソフトウエアの導入を実施する.また,実験結果の発表として査読を経て海外での発表を計画しており,交通費にも充当していく.
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International Journal of Vehicle Safety
巻: Vol.5,No.4 ページ: 333-344
自動車技術会論文集
巻: 43 ページ: 269-274
巻: 43 ページ: 275-280
巻: 42 ページ: 1211-1216
http://www.mech.ce.nihon-u.ac.jp/~tnishi/