研究概要 |
RF マグネトロンスパッタ法を用いてSi(100)基板上にシリコン酸マグネシウム(MSO)圧電薄膜を成膜し,MSO成膜層数が結晶組成と圧電特性におよぼす影響を評価した.1,2,3層の成膜したMSO圧電薄膜の結晶構造はX 線回折によりいずれも(111)方位であることが確認され,また100 pm/V程度の圧電定数が得られた.走査型プローブ顕微鏡によりMSO圧電薄膜の表面にはMSO圧電薄膜の自然分極によりSi基板よりも高い表面電位が誘起されていることが確認されたが,その値は層数に伴い低下した.MSO圧電薄膜に4点曲げにより繰り返し変形を与えながら薄膜上で細胞培養が行える培養装置を作製した.1 Hzの周期で繰り返し曲げをMSO圧電薄膜に与え,MSO圧電薄膜表面に誘起された電位を測定した結果,負荷周期に応じて両振りの電位が誘起され,積層数に従って電位のピーク値は上昇することが確認された. 分極処理したチタン酸バリウム(BTO)および分極処理しないBTOを準備した.油圧サーボ式横型疲労試験機により正弦波1 Hzで,ピーク値65 μεの繰り返し圧縮ひずみを与えたBTO上で骨芽細胞様細胞を6, 9および12日間培養した.変形を与えない場合は,Alkaline Phosphatase(ALP)活性に分極の有無の影響は見られなかった.培養9日目以降において,分極処理したBTOに変形を与えて培養した場合のALP活性がもっとも高くなった.分極しないBTOに変形を与えて培養した場合のALP活性も変形を与えなかった場合より高くなったが,分極したBTOに変形を与えて培養した場合のALP活性より低かった.このことから,繰り返し圧縮変形に伴う圧電材料の表面電位が骨芽細胞様細胞の骨芽細胞への分化を促進することが示唆された.
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