研究概要 |
自動車車体用高成形能アルミニウム板材の開発を目指し,板材の微視結晶集合組織を制御するための圧延プロセス開発が進められている.アルミニウム板材においては,上下ロールの周速度が異なる異周速圧延により板材にせん断集合組織({111}<110>, {111}<112>, {001}<110>)を導入し,このうち結晶の{111}面が板面内に沿う結晶集合組織<111>//NDを集積させることにより,ランクフォード値(r値)が向上する.さらに,自動車車体用薄板材には,高曲げ加工性,および高スプリングバック特性を有する材料開発が求められる. そこで本研究においては,動的陽解法・結晶均質化弾/結晶塑性有限要素法に基づくマルチスケール異周速圧延解析と離散最適化手法とを組み合わせたプロセスメタラジー手法を開発することにより,アルミニウム合金板材のr値向上,および曲げ特性向上のための板材創製プロセスパラメータを最適化した. 結晶均質化マルチスケール有限要素法と応答曲面法に基づく離散最適化手法を用い,アルミニウム合金A6022の成形性向上を目的としたプロセス最適化を行った.その結果,2段異周速圧延を想定した解析において,最適な異周速比1.25, 1.65を見いだした.これにより従来の通常圧延材と比較して,平均r値は1.6倍向上し,面内異方性を1.78倍以上低下させること可能であることを示した.さらに曲げ性,スプリングバック特性向上を目指した異周速圧延と熱処理パラメータ最適化においては,異周速比1.16,焼鈍時間13.5 min.を得た.以上により,本手法は高成形性材料の創製に利用可能なプロセスメタラジー手法として有用であると考える.
|