本研究では、強度および生体親和性に優れるチタンあるいはチタン合金を用いて、細胞付着・増殖を促進する新たなスキャフォールドの創製を行うもので、透過性と骨芽細胞を導入し、破骨細胞を排除するフィルター機能、さらには細胞再生を誘導しやすいスペースを有する骨細胞再生促進型スキャフォールド構造とレーザ積層造形による組織制御プロセスを提案することを目的としている。 上記目的を達成するために、骨細胞再生促進型スキャフォールドの組織制御プロセスの提案ならびに試作を行った。積層造形プロセスについては、「直接レーザ積層造形技術」による三次元スキャフォールド構造の組織制御に関する検討を行った。対象材料としては、最もよく生体材料として利用されている純チタンを対象として、表面性状とレーザ積層造形条件を検討するとともに、チタンメッシュの作製を試みた。作成したレーザ出力と走査速度の関係を示すプロセスマップから、ポアの大きさや分布について明らかにするとともに、メッシュ間隔についても検討を行い、チタンメッシュを作製できた。得られた研究成果については、論文あるいは学会において報告した。 また、生体材料としては、最近生体適合性に優れる材料として利用され始めているTi-Nb系合金を対象として第三元素添加の影響を検討するとともに、これまでほとんど検討されていないTi-Sn-Cr合金についても検討した。Ti-Nb 系では、Ti-Nb-Ta-Zr(TNTZ)合金を金属粉末射出成形(MIM)法およびパルス通電焼結(PAS)法により作製し、その作製条件およびその機械的性質について検討した。この結果、MIM法では、引張強さ約700 MPa、伸び約12%、弾性率約100 GPaの特性を有する合金を作製できた。これに対して、PAS法では、引張強さ、伸びとも低かったが、骨の弾性率に近い約20 MPaの低弾性体を作製できた。
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