研究課題/領域番号 |
23560110
|
研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
長島 伸夫 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, その他 (30354252)
|
研究分担者 |
早川 正夫 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, その他 (50354254)
|
キーワード | 国際情報交換 |
研究概要 |
当該年度は、高クロムフェライト系耐熱鋼(12Cr-2W)のクリープ疲労した焼き戻しマルテンサイト組織についてナノインデンテーション試験を実施した。押し込み試験は、クリープ疲労試験破断材の旧オーステナイト(γ)粒界近傍の粗大なサブグレインと旧γ粒界から十分はなれた微細なサブグレインにおいて行った。また、クリープ疲労試験前材についても、旧γ粒界近傍の比較的粗大なサブグレインと微細なサブグレインにおいても測定した。その結果、クリープ疲労試験前材では、旧γ粒界近傍のサブブレインと旧γ粒界から十分離れたサブグレインの平均硬さはそれぞれ、HV214と212であり、ほとんど差がなく、押し込み曲線も連続的であった。一方、クリープ疲労試験破断材では、旧γ粒界近傍に粗大サブグレインが形成され、析出物の粗大化が観察された。粗大サブグレインでは押し込みの初期において、pop-in現象*)が生じ、平均硬さは、HV153に著しく低下した。しかしながら、粒内の比較的微細なサブグレインでは平均硬さはHV186でpop-inは生じなかった。 ミクロ強度解析による本結果は、前年度実施したFE-SEMを用いた組織解析の結果と関連づけられる。すなわち、クリープ疲労過程において粗大化した旧γ粒界近傍のサブグレインは、硬さの低下ならびに、F-h曲線の初期挙動でpop-in現象が観察されることから、転位の回復が著しく、なお且つ析出物分散強化の低下が生じていることが明らかとなった。 このような粒界近傍の強度低下が粒界破壊を起点とするクリープ疲労破壊の支配的なメカニズムであることを解明しつつある。 *)ナノインデンテーション試験では 押し込み初期において、転位密度が高い場合には、負荷課程で連続的なF-h曲線となるが、転位密度が低い場合、負荷課程で不連続な(pop-in)現象が生じる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで、耐熱鋼および耐熱合金のクリープ疲労試験の特性解析は電子顕微鏡などによる組織解析が主に行われ、それらの微細組織の個々の力学特性についての測定はほとんど為されいなかった。当該年度の研究成果は、当グループで開発した微小領域の力学特性評価法が、クリープ疲労した耐熱鋼および耐熱合金に対して有効であることが明らかとなった。 また、研究成果として2013年10月12日~14日に岐阜大学で開催された「M&M2013カンファレンス」(日本機械学会主催)において研究発表を行った。 したがって、おおむね順調に進展していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
ニッケル基合金アロイ617(Ni-22Cr-9Mo)の高温クリープ疲労試験を行い、クリープ疲労試験前後の組織解析を行い高温疲労に伴う組織変化の定量化を試みる。こらのクリープ疲労試験前および破断材についてナノインデンテーション試験を行う。 これまで得られた試験データおよび解析結果を積極的に国内外の学会に発表する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
試験片加工を次年度に繰り下げた。また、解析装置の消耗品などの購入が予定より少なかったことによる。 解析装置の消耗品などの購入 日本機械学会年会費、日本材料学会年会費、日本高圧力技術協会年会費、鉄鋼協会年会費、日本ばね学会年会費 学会発表などの旅費
|