研究課題/領域番号 |
23560113
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
神谷 修 秋田大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60113891)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ダイヤモンドソーワイヤ / 固定砥粒型 / 金属ろう材 / ハイブリッド加工 / 放電加工 / ジェット流 / 放電加工 / 切断加工 |
研究概要 |
固定砥粒型ダイヤモンドソーワイヤ(ADワイヤと呼ぶ)の改良と切断プロセスのハイブリッドに関して実績を上げた。初めに、切断プロセスハイブリッド化に適するADワイヤ自身の改良を実施した。すなわち、これまではタングステン芯線の直径を80μm以下として超精密加工を実現してきたが、原発の廃炉工程にも対応できるように、ワイヤ直径を100μm以上として切断効率を格段に上げることができるようにワイヤの製造工程を改善した。これらの一連の工程は、秋田大学とダイワ工業との特許(第4590513)として登録している。本経費で購入したワイヤ引張試験機により機械的特性を評価した結果、直径を増加することにより、強度は上昇し細線で発生していたねじれ現象がなくなり、切断効率と寿命が改善された。これらの結果は、本経費で参加した国際会議であるAMDP2011にて発表し、Best Paper Awardを受賞した。 次に、改良したADワイヤにて切断条件と加工効率としての排除量との関係を検討して、排除量は切断係数、接触圧力、ワイヤ速度、切断時間の指数則で表すことができることを示した。これにより、異なったワイヤの特性が比較評価できるとともに、加工量と時間を予測できることを明確にした。 さらに、切断加工と放電加工あるいはジェット流との組み合わせによるハイブリッド加工を試みた。放電加工はダイワ工業が保有するソデック製EPOC-300を使用して、予備実験を実施した。通常の条件で放電アークが発生することを確認した。しかし、張力とワイヤ速度の増加が今後の課題となる。さいごに、ジェット流との組み合わせであるが、単純な流れではなく1分間に1000回を超えるパルス状にすると効果的であることを明らかにした。これは、切り屑の排除とワイヤの振動が効果的であったものと推測する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ハイブリッド加工用の新たな固定砥粒型ダイヤモンドソーワイヤ(ADワイヤ)を製造してその機械的特性と評価法を明らかにした点は評価できる。この中で、ADワイヤの直径を増加することにより、加工効率とワイヤ寿命を改良することができた。それにより、AMDP2011にてBest Paper Awardを受賞した。 加工プロセスのハイブリッド化については、放電加工あるいはジェット流との組み合わせで実施した。通常の放電加工機にADワイヤをセットするだけで、放電アークは発生が可能となることを確認した。しかし、今後は張力とワイヤ速度を増加することが必要なる。ジェット流は、定常的な流れよりもワイヤと被削材との接触点に叩き付けるように高い周波数のパルスジェットとすると効果的であることを見出したことにより順調に進展していると評価される。超音波との組み合わせについては今後の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方針は、これまで開発した金属ろう材で砥粒を固定したダイヤモンドソーワイヤ(ADワイヤ)を用いて、プロセスのハイブリッド化を行うことにより、あらゆる素材の切断効率を格段に改善するものである。これまでのワイヤ直径80μm以下の超精密加工に加えて、100μm以上のタフなADワイヤを製造して、原発廃炉などの大きな素材の切断にも貢献することを目指す。 また、切断プロセスとしてのハイブリッドの方向は、さまざまな現場で対応できるように可搬式の装置開発を目指す。そのため今後は大重量の放電加工ではなく、軽量なジェット流と超音波との組み合わせを主に検討してゆくことを方策とする。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度における計画として、より強いADワイヤへの改良と製造を目差す。ワイヤ自身をハイブリッド化して強化することも検討している。芯線となるタングステンワイヤの直径を200μmとして製造し、さらに他のワイヤを組み合わせて補強することを検討する。本計画の強みは、製造装置、切断装置など全て自前の開発装置であり、他にない特色を持っている点である。 切断プロセスとしてのハイブリッド化は、主に高速パルスジェット流をメインにして、新たな共同研究先である三和テッキと協力して、廃炉工程にも使用できる、切断プロセスの開発を行う。そのため、これまでの切断機を再検討して、可搬式ハイブリッド切断機を設計することである。 平成23年度末に、ダイヤモンド砥粒塗布装置、ADワイヤ製造装置、切断機、各種観察測定器を秋田大学ベンチャーインキュベーションセンターに集約して、集中的に研究開発をする準備ができた。今後は、ここを開発拠点として他機関、企業とも連携しながら研究を推進する。
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