本研究は,小径管材(外径が数mmオーダーの管材)のハイドロフォーミング(THF)において,管材と成形金型との間の摩擦力を積極的に活用する新たなTHFを開発するものである.成形金型の表面に”めっき”加工を施すことで管材と成形金型との接触状態を変えて,その変化を成形に利用することを目的としている. 平成25年度は,外径8mm・肉厚0.8mmのアルミニウム合金(A6063)管を用いた検討を実施した.金型には窒化ホウ素と二硫化モリブデン粉末を無電解ニッケルめっき中に分散した複合めっき被膜(厚さ10μm)を下型に施したものと施さないものを使用した.成形形状はティー継手形状とした.潤滑剤には二硫化モリブデンのスプレーを使用した. 成形結果に及ぼすめっき被膜の効果を調べたところ,平成24年度までに得られたクロス継手形状成形の結果とは逆の傾向となった.つまり,めっき被膜を施すことによって成形されるティー継手形状の枝管長さが長くなる傾向となった. 研究期間全体を通じた結果として,平成25年度に得られた結果は,研究開始前の予想と傾向は合っている.しかし,平成24年度までに得られた結果は逆の傾向であったことからすると,めっき被膜の効果は成形形状(本研究の範囲ではティー成形かクロス成形)や被膜を施す位置(ティー成形では下型のみにめっき被膜を施した)で異なるとも言えそうである.しかしながら,そのような結論を出して良いとは言い切れない点も残った.それは,めっき被膜を施したことによる枝管長さの変化がそれほど大きくなかった(0.2mm程度であった)ということである.また,めっきの潤滑性能の問題ではなく,めっきの被膜の厚さが枝管長さに影響した可能性も否定できない.これらの問題点を解決するためには,めっき被膜の種類や厚さ,施す場所や潤滑剤の種類を変えるなど,さらなる検討が必要であると考える.
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