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2012 年度 実施状況報告書

相変態を考慮した熱弾塑性構成モデルとそのホットプレスへの応用

研究課題

研究課題/領域番号 23560116
研究機関東京農工大学

研究代表者

長岐 滋  東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30135959)

研究分担者 大下 賢一  東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60334471)
キーワード変態塑性 / 熱弾塑性構成式 / マルテンサイト変態 / パーライト変態 / 変態塑性係数
研究概要

ホットプレスなど高温下で相変態を生じる可能性のある変形過程のシミュレーションでは,多軸応力状態下での相変態の進行と変態誘起塑性変形を適切に記述する必要がある.このために従前より所有していた引張り・ねじりの2軸応力負荷試験装置を大幅に改良し,高温から冷却される炭素鋼(S45C材),合金鋼(SCM440)について,変態膨張,変態誘起塑性変形を実験的に測定した.実験結果は通常用いられている変態塑性のMises型の多軸構成式では的確に表現できないことが示された(日本材料学会学術講演会で発表済).特に圧縮方向に負荷が可能になるように装置を改良したことにより,引張りと圧縮方向での変態塑性係数が大きく異なることが示され,異方性構成式の必要性がより明らかになった(日本材料学会塑性工学部門委員会で発表済).
このように多軸での変態塑性挙動を具体的に測定する一方で,実用的にはより簡便な変態塑性系数の測定法を確立することが必要であるとの認識から,急速冷却下での3点曲げ試験装置を試作し,さまざまな工夫を施すことによって変態塑性系数を簡便に測定することの可能性を示した.
変態塑性に関する理論的な検討として,介在物理論にもとづく簡易的な数値計算を行い,引張,圧縮,せん断における変態塑性係数の差異をある程度説明するモデルを構築することが出来た.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

・実験的な面では,2軸実験装置の大幅な改良を進めることにより,当初の予定通り引張・ねじり2軸応力下での変態塑性挙動をほぼ計測可能になっている.さらに今回の装置の改良によって,当初は計測が難しいと考えていた圧縮応力下でも変態塑性挙動を観測することができるようになった.これによってより正確な変態曲面の同定を行うことができる.
・ホットプレスの状況に対応できるように,曲げ変形における変態塑性挙動を測定するための試験装置を試作し,曲げ変形下における変態塑性挙動も計測が可能になった.これにより簡易的に変態塑性係数が測定できる.
・理論的な面においては,当初は変態の素過程からマクロ変態曲面を求める予定であったが,理論的な構成がむずかしくこの観点からの検討を引き続き進めると同時に,研究期間内での実用的な構成式の導出を目指して等価介在物を用いた手法に力点を移し現在は検討を進めている.この介在物を用いた理論によっても変態塑性挙動の異方性を示すことができることを確認した.

今後の研究の推進方策

・2軸応力下での変態塑性に関する実験データの充実に努める.前年度までに装置の改良はひと通り終了しており,今年度はS45C,SCM440,その他の炭素鋼についての種々の冷却条件下での実験を行なう予定である.
・2軸試験機による実験だけでなく,より簡易に変態塑性係数を測定できる3点曲げ試験装置を改良し精度の向上を図る.具体的に今年度は引張りと曲げの同時負荷(引張りながら曲げを負荷する)が可能なように装置を改良する.これは2軸実験の結果,引張と圧縮応力下において変態塑性係数が大きく異ることが明らかになり,単純な曲げ負荷のみでは引張りと圧縮の応力が同時に加わることから,それによる変態塑性係数導出時の誤差を少なくするためである.
・変態曲面のモデルについて,介在物理論を用いて巨視的塑性論と類似な等価応力による表現できるか検討する.また対応した等価変態ひずみについても検討すると同時に,塑性論における流れ則に相当する関係を導き,通常の弾塑性構成式を異方性を考慮した形に拡張することで,新たに弾塑性・変態構成モデルを導く.並行して得られた構成式を汎用有限要素法に組み込み,相変態を考慮した3次元弾塑性変形解析を可能とし,ホットプレス過程の変形解析を行う.

次年度の研究費の使用計画

・主に熱曲げ試験装置の改良のための各種部品の購入,製作費用が必要となる.これは,変態塑性係数の簡易測定を実現することと,ホットプレス過程により近い状況を実現するための改良である.なお今年度実施した2軸試験装置,3点曲げ装置の改良等に予定より費用がかかったこと,また購入を予定していた温度測定用の赤外線サーモグラフィ装置も当初見積りより高額となったことにから,サーモグラフィ装置の購入を見送った.このため次年度使用額が264,979円となっているが,装置の仕様を再検討して赤外線サーモグラフィ装置を購入する予定である.

  • 研究成果

    (2件)

すべて その他

すべて 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)

  • [学会発表] 曲げおよび2軸応力場における変態塑性の実験的検討

    • 著者名/発表者名
      長岐滋
    • 学会等名
      日本材料学会塑性工学部門委員会材料データベース研究分科会
    • 発表場所
      京都 日本材料学会3階会議室
    • 招待講演
  • [学会発表] 鋼の引張・ねじり2軸応力下における変態塑性挙動の実験的検討

    • 著者名/発表者名
      引田直樹・小室裕樹・長岐滋・大下賢一
    • 学会等名
      日本材料学会第61期学術講演会
    • 発表場所
      岡山大学 津島キャンパス

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公開日: 2014-07-24  

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