航空機部品等に使われるCFRPに対する孔加工技術を効率的に行う一手法としてブラスト加工を,ドリル等の一般的な手段と比較した結果,厚さ1-2㎜のCFRPに径1-2㎜の孔加工を行うには,ファスナー孔のような高精度孔でない限り,ブラストによる方法が最も効率的な方法として適することがわかった.しかし,ブラストによる孔加工工程には不明点が多く,CFRP板に対し微細砥粒を用いた直噴式ブラスト加工で,孔加工が進展する過程を観察し,微細エロージョン過程としての材料除去メカニズムを昨年度まで検討してきた. 本年度はブラストによる孔加工メカニズムをより明確にすべく,被削材と加工条件をさまざまな種類に変えることによって,理論式との比較を行い,エロージョン摩耗による孔加工進展メカニズムを詳細に分析した結果,以下の事項を確認した. ①エロージョン摩耗進展では,加工時間とエロージョン量がほぼ正比例の関係にある.②被削材種とメディア種、ブラストノズル圧に,エロージョン速度は大きく支配される.たとえば,被削材のCFRPはGFRP やエポキシ材に比べ約2倍の速さで摩耗し,メディアのWA(ホワイトアランダム)は同一粒径SiC(炭化珪素)の2倍の効率であり,ノズル圧が1.5倍になると加工効率は2倍以上になる.また,CFRPでは被削材内にエポキシの偏在が存在し,カーボン繊維が先に摩耗進展することで磨耗状態にバラツキが生じる.③孔の加工断面は加工条件に応じてテーパ形状になるが,加工時間を増やすとテーパは減少する.しかし加工時間が長すぎるとマスク材が摩耗し孔径が拡大する.④加工条件や材料の違いから,エロージョン量を実測した結果と理論式を比較した結果,加工結果をある程度推算することができる. 以上の研究成果を,論文化し学会などで発表してきたが,今後さらに本技術を用いて、吸音材料を試作実用化する研究を続ける予定である.
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