研究課題/領域番号 |
23560119
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
酒井 克彦 静岡大学, 工学部, 准教授 (80262856)
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研究分担者 |
鈴木 康夫 静岡大学, 工学部, 教授 (80091148)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ミスト切削 / 雰囲気制御切削 / 深穴加工 / 切削抵抗 / 工具摩耗 |
研究概要 |
本年度は従来行ってきた切削実験の再現性を確認する意味で穴あけ加工実験を実施した.実験にはマシニングセンタ(エンシュウE130型、牧野フライスV33型)を用い、 試験材料はS48C調質材およびステンレス鋼SUS304を、ドリルには油穴付き超硬ソリッドタイプ(三菱マテリアル,タンガロイ)を用いた.加工中にドリルに作用する加工力は4 分力計(Kistler9272型)を用いて測定した.加工時における加工点近傍温度の計測は材料埋め込み熱電対およびサーモグラフィを併用して実施した. また切りくず排出挙動の観察はハイスピードカメラ(PhantomMiro4型)を用いて実施した..切削実験後のドリル先端部の観察 は走査型電子顕微鏡(日本電子JSM-T330A型)、ビデオ顕微鏡(HiroxKH7700)を用いた.さらにEPMA(島津製作所EPMA-1720型)およびXPS(KRATOS XSAM800pci)により切削による仕上げ面表面近傍の元素同定および結合状態の推定を実施した. 実験から,CO2をキャリアガスとして利用したミスト切削において,ドリル逃げ面の摩耗低減効果とドリルに作用する切削抵抗低減効果があることを再確認した.また,深穴加工における切りくず排出状況可視化実験を実施し,切削条件によって切りくずが分断したり,つながったりする様子をハイスピードカメラで解析することに成功した.また,仕上げ面の元素分析結果からCO2ミストを供給した切削加工表面における炭素量の有意な増加が認められ,このことが切削加工における工具,被削材料間の摺動に何らかの影響を与えていることを示唆するデータを得ることが出来た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初本年度に予定していた実験項目についてほぼ実施することが出来た.但し,サーモグラフィによる計測では,ドリルや被削材全体の温度変化の傾向を観測することが出来たものの,切削点近傍のピンポイントの温度計測については熱電対を用いた方法によっても困難であり,今度とも試行錯誤をしながら取り組む必要がある.またEPMAやXPS分析に当たって,当初は深穴加工実験試験片から測定用の試験片を切り出すことを検討したものの,試験片製作時の影響が排除できない懸念があることから,新たに元素分析用の試験片を作成するための切削実験を行う必要があり,結果として当初の想定よりも元素分析に手間取った.そのこともあって全体計画に対してやや研究の進捗状況が遅いという結果になった.その一方で,当初予定していなかった切削点近傍における切りくず排出状況の可視化については可視化用の治具が想定より有効であることが分かり,切削条件によって切りくずが分断したり連続型になる様子をハイスピードカメラで撮影することに成功するなど,着実に研究成果を得ていると言える.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方針としては,今年度の研究進捗遅れを取り戻すために,引き続きXPSによる被削材表面の元素分析と切削点近傍温度測定実験を実施していく.また,切削シミュレーションソフトでは当初予定していた3次元解析が計算時間が想定以上にかかり実用上問題があることが判明したため,二次元解析とする代わりに旋削などの切削実験を追加していく予定である.また,切削実験に加えてCO2ガスミストによる摩擦力や工具摩耗低減効果が生じるメカニズムについて,摩擦試験等のトライボ実験を通して明らかにする予定である.また,圧縮空気ミストに最適化された市販油剤に変わる,CO2ミストや窒素ミストに適した油剤の探索を実施する.また,実際の生産現場への導入を考慮して,高コストのCO2ガス使用量を削減するために,CO2をN2との混合ガスとする実験を実施する予定である.さらに,昨年度から一部開始している,難削材であるステンレス鋼の深穴加工実験を開始する予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究に必要な備品類は今年度に整備したため,次年度以降は実験に必要な消耗品類や旅費,研究謝金として使用する予定である.以下に具体的な内容について示す.・切削シミュレーションソフトウエアのアップデート費用,・切削実験に必要なドリル,試験片,切削油剤,CO2ガス,N2ガス購入費用,・切削点近傍温度測定用実験治具製作費用,・研究成果を学会や国際会議で発表するための旅費,・論文投稿関係費用,・実験補助及びデータ整理謝金
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