本年度は,外周旋削において工具先端部に圧縮空気の代わりにCO2ガスを用いた切削油ミストを供給することが工具の摩耗に与える影響とそのメカニズムを調べることを目的として,一般構造用S45C丸棒の外周旋削による摩耗試験,二次元切削,切削温度計測実験を行い以下の結論を得た.旋削におけるミスト加工にCO2ガスを用いることで工具逃げ面の境界摩耗が低減した.ただし,ドリルによる穴あけに比べると摩耗低減効果は小さい.これは旋削では加工面が外気と遮断されていないため完全なCO2雰囲気を作ることができなかったことが考えられる.また,主分力,背分力,送り分力にCO2導入による有意な差はみられなかった.二次元切削による結果から工具と切りくず間の摩擦係数,せん断角,比せん断エネルギー,比摩擦エネルギーを算出したが,CO2ガスの使用による差はみられなかった.このことから旋削のミスト加工においてCO2ガスで境界摩耗が低減することに摩擦低減の影響は少ないと考えることができる.さらに工具に埋め込んだ熱電対による温度測定と工具-被削材熱電対法による熱起電力の測定より,旋削におけるミスト加工にCO2ガスを用いることで切削温度が明らかに低下することを確認した.このことから,工具の摩耗低減に関しては切削温度の低減による可能性が高いと考えられる.
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