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2011 年度 実施状況報告書

熱塑性変形を利用したバルク金属ガラスの常温弾性率の制御技術開発

研究課題

研究課題/領域番号 23560121
研究機関三重大学

研究代表者

吉川 高正  三重大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10505902)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワードバルク金属ガラス / 熱塑性変形 / 弾性率 / 常温 / 結晶化
研究概要

本研究の目的は,バルク金属ガラスに熱塑性変形を加えることで,微細結晶粒を生じさせ,工業的に有利な常温での変形特性を発現させる条件を見出すことにある.特に,本研究では,熱塑性変形条件と,常温復帰後の弾性率の関係について明らかにすることを目指した.Zr55Cu30Al10Ni5 バルク金属ガラスについての結晶化が進みやすい温度条件を避け,偶発的にせよ発現が確認されたひずみ速度およびひずみ量周辺での調査を行うとともに,よりひずみ速度およびひずみ量条件を網羅的に広げて調査を実施した.これにより,工業的技術として展開しうる可能性を確認することを試みた.その結果,熱塑性変形によって結晶相析出が生じにくいガラス転移温度よりも20K程度低温の663Kにおいて大きなひずみ量を与えると,弾性率が原材料の60%程度まで低下することが確認された.しかしながら,現時点では再現性調査が未達であるとともに,このような温度域では,不均一変形が生じることから,均一変形を生じる領域での特性発現の確認を要するものと考えられた.一方,従来のアモルファス合金よりも熱的安定性が高いとはいえ,BMGの温度に対する材料変質の感受性は多結晶性金属材料と比較すると格段に高いため,多結晶性金属材料を想定した熱塑性変形可能な力学試験機付属の加熱炉の改善を目指し,設定温度を超過しにくい昇温速度制御可能な制御器に変更した.予備的に,単一温度制御器での温度制御を試みた.しかし均質的な炉内温度が得にくいことが確認されたため,今後改善していく.また,ひずみ量の計測とひずみ速度の制御方法の改善を目指し,ビデオ伸び計の導入を進めた.しかしながら,研究室所有の力学試験機と市場に既存するビデオ伸び計の仕様が大幅に異なるため導入には至らなかった.現在,代替となるシステムを研究者自ら設計・開発することを検討している.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

目的達成のためのステップとしては,主に(1)熱塑性変形後の偶発的な弾性率変化についての条件との相関の調査,(2)条件の制御技術の開発,(3)メカニズムの確認である.3年間の研究機関において2年間を(1)~(2)に投入し,3年目に(3)と総括に費やす予定である.(1)と(2)については同時的に進行する内容である.(1)について,熱塑性変形における温度,ひずみ速度,ひずみ量の制御条件において,温度条件の変更が強く影響しうる可能性が見いだされつつある.しかしながら,現時点では明確な相関が見いだされとは言えない.網羅的な予備実験を実施したが,目的とする弾性率の変化は偶発的に現れただけであり,再現性及びその確率について調査するには至っていない.一方,(2)については,加熱炉の制御装置の改造を実施するとともに,熱塑性変形時のひずみ量計測およびひずみ速度制御のための伸び計の導入を検討してきた.前者については,既設炉に対して単一制御装置では均質温度の実現が困難であることが確認され,変更を進めつつある.また,後者については,取り付けを予定していた力学試験機と市場に現存する伸び計の仕様の差から,市販のビデオ伸び計が購入できなかったため,現在,力学試験機に合致する伸び計測システムを再検討中である.以上から,研究の達成度は全体の10~20%であると判断しており,次年度より一層の研究推進に努める予定である.

今後の研究の推進方策

現在までの達成度において若干の研究推進の遅れが見いだされたため,今後の研究の推進について以下の通り検討している.(1)直交表による実験計画によって短期間・効率的に進め,再度,熱塑性変形条件と弾性率変化についての相関を網羅的に確認する.現実的に偶発的現象であるか,制御可能かを早期に確認しておく.特に,3年目のメカニズムとの相関調査に向け,これらの現象の多面的な予備調査を進めながら,検討していく.(2)制御方法について,温度制御は電気炉制御装置を早期に拡張する.また,熱塑性変形条件におけるひずみ量およびひずみ速度の計測・制御に関しては,市販のビデオ伸び計以外の方法を検討しつつ,可能な限り研究者自ら設計・開発することで対処していく.また,熱塑性変形時のひずみ量計測やひずみ速度制御が困難な理由として,試験片把持装置(力学試験チャック部)のすべり等が疑われたため,これら周辺的部位の変更を含めて検討していく.

次年度の研究費の使用計画

前項の研究の推進方策に基づき,次年度の研究費の使用において,以下のように計画している.(1) Zr55Cu30Al10Ni5 バルク金属ガラス試験片を購入(300千円)する.(2)温度制御装置を電気炉の仕様に合わせ,2台加える(300千円).(3)ひずみ量及びひずみ速度計測システムおよび熱塑性変形時の把持システムの開発・改造(1,200千円).特に(2)と(3)については初年度の未達内容であるため繰越金を用いて早期に実施する.

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2011

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] ジルコニウム基バルク金属ガラスの熱塑性変形による常温引張ぜい性の改善2011

    • 著者名/発表者名
      吉川高正,山下祐輝,稲葉忠司,徳田正孝
    • 雑誌名

      材料

      巻: 60 ページ: 533-539

    • 査読あり
  • [学会発表] Zr55Cu30Al10Ni5バルク金属ガラスの常温縦弾性係数に関する熱塑性変形の影響2011

    • 著者名/発表者名
      室耕太郎,吉川高正,稲葉忠司
    • 学会等名
      日本機械学会2011年度年次大会
    • 発表場所
      東京工業大学
    • 年月日
      2011年9月12日

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公開日: 2013-07-10  

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