研究課題/領域番号 |
23560127
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
塚本 眞也 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (80163773)
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研究分担者 |
大橋 一仁 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (10223918)
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キーワード | シミュレーション解析 / 円筒研削 / 内面研削 / 工作物熱変形 / インプロセス測定 / 形状精度 / 寸法精度 / 研削現象 |
研究概要 |
平成23年度に円筒研削の熱変形挙動の解明はほぼ確立されたため,平成24年度は,実際に研削中の工作物熱変形を考慮した加工システムの開発を実施した. 円筒研削においては,一般に寸法生成量を研削中に実測しながら加工がおこなわれるが,研削中に工作物が熱膨張している場合は,寸法生成量の実測結果が目標値に達した時点で研削を終了すると,工作物が冷却されて収縮した後には,寸法生成量が目標の値を上回ってしまい,工作物の直径が意図した値よりも小さな値となる.そこで,研削中の工作物熱変形量と寸法生成量(実際に工作物が研削された量)を足し合わせることで,加工中に膨張している工作物が加工終了後に熱収縮した後の正味の寸法生成量を演算し,その演算結果に従い加工機を制御することで,熱変形に起因する寸法誤差の抑制を図った.実際に研削中に,正味の寸法生成量を演算するソフトウェアを開発するとともに,これまでの研究成果を生かしてその有効性を研削実験により検証した. その結果,半径約43mmの工作物において,熱変形量が半径あたり約4μm生じた場合にも,開発したシステムの演算結果に従って研削盤を制御することで,最終的な寸法誤差を半径あたり0.1μmに抑制することができ,本システムの有効性を確認できた. また,円筒研削に関する研究では,研削プロセスの終了直前における寸法生成過程を明らかにするために,砥石の切込みを止めた状態で研削を行うスパークアウト研削の時間を変更し,工作物の寸法精度の悪化を定量的に把握した.その結果,スパークアウト時間には最適値があり,スパークアウト時間が短すぎると砥石先端部での切り残しが発生するため形状精度が悪化し,長すぎると砥石先端部の研削量が過剰となり,形状誤差が生じることが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では,平成25年度末までに開発する予定であった円筒研削における工作物熱変形量を考慮した加工システムの開発と研削実験による実証を完了しており,工作機械の世界的な見本市であるJIMTOF2012で,広く社会や産業界に研究成果を広報できた.また,内面研削においても,順調に工作物の寸法生成過程の把握を進めている,
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終年度である平成25年度は,円筒研削の工作物熱変形量を加味した加工において,工作物の熱変形量のシミュレーション解析結果から正味の熱変形量の算出を行う手法を開発する.現在開発されたシステムでは,工作物の一部分の熱変形量を実測し,その結果から研削されている部分の熱変形量を間接的に推定している.そんため,工作物には熱変形量を測定する「非研削領域」を設ける必要があり,本システムを用いて加工できる形状に制約がある. そこで,本年度は「非研削領域」を設けずとも,容易に工作物の熱変形量を求めることができる工作物熱変形量のシミュレーション解析(平成23年度に開発)結果を用いて,正味の寸法生成量を算出し,その結果から加工機を制御する. また,内面研削においては,砥石の損耗や弾性変形を考慮した加工終了後の工作物内面形状の推定が可能なシミュレーション解析の開発を行う. いずれの開発においても,最終的には研削実験実験を行い,妥当性を評価する.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は,研究費により各種の計測装置の導入を行う.各種の変位センサや,アンプ,データ収集用のロガーの購入により,さらなる研究設備の充実を図る.また,研究成果の報告のため,9月には国際会議(ISAAT2013)で研究成果を報告するための旅費としても,本研究費を用いる予定である.
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