研究課題/領域番号 |
23560132
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
谷水 義隆 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60275279)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | グリーンサプライチェーン / 温室効果ガス / 最適化 / 遺伝的アルゴリズム / 輸送計画 / 生産スケジューリング |
研究概要 |
人為的に発生する二酸化炭素(CO2)の排出量は,自然界の吸収量の2倍を超えており,低炭素型社会の実現が希求されている.今後,製造企業に対して,CO2排出量の低減は,さらに厳しくなることが予想される.しかし,一方で,環境問題は,企業の経済活動において,制約条件でしかないことが示唆されている.そこで,CO2排出量の低減を推進するには,環境保全の活動に経済的優位性を高める仕組みが必要であると考えられる.応募者は,これまでに,物品調達の取引先を契約ごとに組み替える「動的サプライチェーン」の研究を行ってきた.既存の研究では,製造企業(サプライヤ:Supplier)が,自身の生産スケジュールを改善しながら,顧客(クライアント:Client)と交渉を繰り返すことで,利益と顧客満足度を最大化する最適な契約をリアルタイムに締結する「二階層動的サプライチェーンモデル」を提案した.さらに,サプライヤとクライアント間の輸送を考慮して,生産スケジュールと輸送計画を同時に改善する拡張モデルを提案した.本研究では,まず,既存のモデルを拡張し,企業内および企業間におけるCO2排出量を考慮したグリーンサプライチェーン(GSC)モデルを構築する.次に,CO2排出量の最小化と利益・顧客満足度の最大化を考慮した多目的最適化手法を提案し,環境保全と経済成長を同時に考慮したGSC管理手法の確立を目指す.これにより,企業,顧客だけでなく,自然環境も含めたWin-Win-Winの関係(利益最大-顧客満足度最大-低炭素)を構築したいと考えている.平成23年度は,輸送工程におけるCO2排出量を考慮したGSCの最適化に関する研究を行った.以下に,実施した研究課題を示す.(1)輸送工程のCO2排出量を考慮した二階層GSCモデルの作成(2)多目的遺伝的アルゴリズムを用いたGSCの最適化とその評価
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は,輸送工程におけるCO2排出量を考慮したグリーンサプライチェーン(GSC)の最適化を行った.研究の手順を以下に示す.(1)輸送工程のCO2排出量を考慮した二階層GSCモデルの作成これまでの研究で提案した動的サプライチェーンモデルを拡張して,輸送工程のCO2排出量を考慮した二階層GSCモデルを作成した.ここでは,CO2排出量を算出する指標として,改良トンキロ法を用いた.改良トンキロ法とは,平成18年に経済産業省,国土交通省および関係機関が共同でまとめたCO2排出量算定方法であり,改正省エネ法でも採用されている.これにより,積載量が異なる輸送機器ごとに,CO2排出量を詳細に計算することができる.(2)多目的遺伝的アルゴリズムを用いたGSCの最適化とその評価輸送工程におけるCO2排出量を減らすためには,輸送機器の小型化や輸送回数の低減が考えられる.しかし,これにより,輸送能力が低下するため,顧客の要求納期を満たすことが困難になり,製造企業にとっては契約機会の損失となる.そこで,契約獲得数を減らすことなく,CO2排出量を抑えた適切な輸送機器の大きさと輸送回数の計画が必要である.ここでは,多目的遺伝的アルゴリズムを用いて,生産スケジュールと輸送計画を改善し,CO2排出量の最小化と契約獲得数の最大化を行う手法を提案した.また,GSCシミュレーションシステムのプロトタイプを開発して,計算機実験を行うことで,その有効性を検証した.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度以降の研究計画を以下に示す.(1)生産工程と輸送工程のCO2排出量を考慮したグリーンサプライチェーン(GSC)の最適化(2)多階層GSCのモデリングと全体最適化特に,平成24年度は,生産工程と輸送工程のCO2排出量を考慮したGSCの最適化を行う予定である.ここでは,23年度に作成したGSCモデルを拡張して,輸送工程だけでなく,生産工程のCO2排出量も考慮した二階層GSCモデルを作成する.ここでは,CNC工作機械の電力量を計測し,電力原単位に基づいて,工作機械の稼動中に生成されるCO2排出量を算出する.また,既存のモデルに基づき,生産工程と輸送工程におけるCO2排出量を考慮した生産スケジュールと輸送計画の最適化を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は,CNC工作機械の稼働中における電力量をクランプ電力計で計測し,電力解析プログラムを用いて電力量を解析する.そのデータから,電力原単位に基づき,CO2排出量を算出する.これに基づき,グリーンサプライチェーン(GSC)モデルを拡張するとともに,GSCシミュレーションシステムを拡張する.そのために,クランプ電力計(横河メータ&インスツルメンツ社製 CW240)1台,電力データ解析プログラム(アートシステム製AP240),および電力量計測用コンピュータ(NEC社製 PC-GV296)1台の購入を予定している.
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