経済性を考慮したグリーンサプライチェーンのための生産計画と輸送計画の動的最適化

2013 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 23560132
• 研究機関: 大阪府立大学
• 研究代表者: 谷水 義隆 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60275279)
• キーワード: グリーンサプライチェーン / 温室効果ガス / 最適化 / 遺伝的アルゴリズム / 輸送計画 / 生産スケジューリング

研究概要

低炭素型社会を実現するには，経済的優位性の高い環境保全の方法が必要である．そこで，本研究では，生産工程と輸送工程の二酸化炭素排出量を考慮したグリーンサプライチェーン(Green Supply Chain: GSC)モデルを構築し，二酸化炭素排出量の最小化と利益・顧客満足度の最大化を考慮した多目的最適化手法を提案することで，環境保全と経済成長を同時に考慮したGSC管理手法の確立を目的としている．
応募者は，前年度までに，輸送工程の二酸化炭素排出量を考慮した二階層GSCモデルを作成し，多目的遺伝的アルゴリズムを用いたGSCの最適化手法を提案した．次に，既存の手法を拡張し，生産工程と輸送工程の二酸化炭素排出量を考慮したGSCの新たな最適化手法を提案した．ここでは，既存の手法に，輸送計画に基づいて生産スケジュールを改善するプロセスを追加し，これを繰返し行うことで，輸送工程における二酸化炭素の排出量をより削減する手法を提案した．また，GSCシミュレーションシステムを開発し，計算機実験を行うことで，企業間取引の契約数やSupplierの利益を損なうことなく，既存の手法よりも，二酸化炭素排出量を削減できることを検証した．しかし，これまでの手法では，納期に間に合う輸送機器の中から，積載率が最も高い輸送機器に製品を逐次割り当てるため，後から追加される製品を輸送機器へ割り当てる余裕が十分に考慮されていないという問題があった．
そこで，平成25年度は，製品の納期余裕を考慮して，輸送機器への製品の適切な割り当てを決定する探索手法を提案した．これにより，契約数を減らすことなく，積載率を向上させるとともに，二酸化炭素の排出量を削減する輸送スケジュールを作成することができる．さらに， GSCシミュレーションシステムを用いて，その有効性を検証した．

現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

平成25年度は，前年度に提案した最適化手法の拡張を行った．そのため，研究計画で予定していたように，二酸化炭素排出量計測のための実験および製造実行環境における有効性の評価を行うことができなかった．

今後の研究の推進方策

今年度は，二酸化炭素排出量計測のための実験および製造実行環境における有効性の評価を行う
まず，生産工程の二酸化炭素排出量も考慮した二階層GSCモデルを評価するために，ここでは，CNC工作機械の電力量の計測を行う．しかし，近年，工作機械の稼働中の電力量を計測した研究がいくつか見られるようになった．そのため，そのデータを参照して電力原単位に基づき，工作機械の稼動中に生成される二酸化炭素排出量を概算する方法についても検討したいと考えている．次に，提案したモデルに基づき，GSCの生産工程および輸送工程の二酸化炭素排出量を考慮した全体最適化手法を提案し，製造実行環境において，その有効性を評価する．

次年度の研究費の使用計画

平成25年度は，前年度に提案した最適化手法の拡張を行った．そのため，研究計画で予定していたように，二酸化炭素排出量計測のための実験および製造実行環境における有効性の評価を行うことができなかった．
CNC工作機械の稼働中における電力量をクランプ電力計で計測し，電力解析プログラムを用いて電力量を解析する．そのデータから，電力原単位に基づき，二酸化炭素排出量を算出する．これに基づき， GSCモデルを拡張するとともに，GSCシミュレーションシステムを拡張する．そのために，クランプ電力計（横河メータ＆インスツルメンツ社製 CW240）1台，電力データ解析プログラム（アートシステム製AP240)，および電力量計測用コンピュータ（NEC社製 PC-GV296）1台の購入を予定している．
また，GSCシミュレーションシステムに，製造実行システム（MES）およびCNC工作機械を接続して，受発注処理から製造指示までの提案手法の有効性を検証するために，MESデータベースサーバ（NEC社製 Express5800/T110b）1台，およびMESインタフェースユニット（三菱電機社製 VN-SWMIT1-E）1台の購入を予定している．

研究成果

• [雑誌論文] 共進化遺伝的アルゴリズムを用いたリアクティブスケジューリング手法の拡張（オープンショップスケジューリング問題への適用と実験的評価） (2013)
  • 著者名/発表者名: 谷水義隆, 小松祐介, 小澤知里, 岩村幸治, 杉村延広
  • 雑誌名: 日本機械学会論文集(C) 巻: Vol. 79, No. 802 ページ: 2207-2220
  • 査読あり
• [雑誌論文] A Closed-Loop Supply Chain Model for Parts Reuse Considering Economic Efficiency (2013)
  • 著者名/発表者名: Yoshitaka Tanimizu, Yusuke Shimizu, Koji Iwamura and Nobuhiro Sugimura
  • 雑誌名: Proceedings of International Symposium on Scheduling 2013 巻: - ページ: 178-183
  • 査読あり
• [雑誌論文] Modeling and Simulation of Closed-Loop Supply Chains Considering Economic Efficiency (2013)
  • 著者名/発表者名: Yoshitaka Tanimizu, Yusuke Shimizu, Koji Iwamura, and Nobuhiro Sugimura
  • 雑誌名: Advances in Production Management Systems. Sustainable Production and Service Supply Chains 巻: - ページ: 461-468
  • DOI: 978-3-642-41265-3
  • 査読あり
• [雑誌論文] A Work Instruction System Based on an Analysis of Learning Processes for Assembly Cells (2013)
  • 著者名/発表者名: Yoshitaka Tanimizu, Satoru Ishii, Takashi Yokotani, Koji Iwamura, Nobuhiro Sugimura
  • 雑誌名: Proceedings of the 7th International Conference on Leading Edge Manufacturing in 21st Century 巻: - ページ: 565-570
  • 査読あり
• [雑誌論文] Assignment of Human Operators to Machine Tools and Scheduling Considering Statistical Distribution of Processing Times (2013)
  • 著者名/発表者名: Koji Iwamura, Hiroya Tagashira, Yoshitaka Tanimizu and Nobuhiro Sugimura
  • 雑誌名: Proceedings of International Symposium on Scheduling 2013 巻: - ページ: 8-11
  • 査読あり
• [雑誌論文] Analysis of Kinematic Motion Deviations of Machining Centers Based on Geometric Tolerances (2013)
  • 著者名/発表者名: Atsushi Takahashi, Arata Yoshida, Wiroj Thasana, Nobuhiro Sugimura, Yoshitaka Tanimizu And Koji Iwamura
  • 雑誌名: Proceedings of the 7th International Conference on Leading Edge Manufacturing in 21st Century 巻: - ページ: 553-558
  • 査読あり
• [雑誌論文] A Simulation of Kinematic Deviations of Boring Processes on CNC Machining Centers (2013)
  • 著者名/発表者名: Wiroj Thasana, Atsushi Takahashi, Arata Yoshida, Nobuhiro Sugimura, Yoshitaka Tanimizu And Koji Iwamura
  • 雑誌名: Proceedings of the 7th International Conference on Leading Edge Manufacturing in 21st Century 巻: - ページ: 141-146
  • 査読あり
• [学会発表] グローバルサプライチェーンにおける生産能力の異なるサプライヤの選定方法に関する基礎的研究 (2014)
  • 著者名/発表者名: 松下 渉，清水悠介，谷水義隆，岩村幸治，杉村延広
  • 学会等名: 日本機械学会関西支部第89期定時総会講演会
  • 発表場所: 大阪
  • 年月日: 20140318-20140319
• [学会発表] 拡散共進化遺伝的アルゴリズムによるリアクティブスケジューリング手法の拡張 (2014)
  • 著者名/発表者名: 酒井祐輝，谷水義隆，坂本道亮，岩村幸治，杉村延広
  • 学会等名: 日本機械学会関西支部第89期定時総会講演会
  • 発表場所: 大阪
  • 年月日: 20140318-20140319
• [学会発表] 歩留まりと作業時間のばらつきを考慮した作業者の工作機械への配置とスケジューリング (2014)
  • 著者名/発表者名: 森田浩平，岩村幸治，谷水義隆，杉村延広
  • 学会等名: 生産システム部門研究発表講演会2014
  • 発表場所: 東京
  • 年月日: 20140317-20140317
• [学会発表] A Work Instruction System Based on an Analysis of Learning Processes for Assembly Cell (2013)
  • 著者名/発表者名: Yoshitaka Tanimizu, Satoru Ishii, Takashi Yokotani, Koji Iwamura, Nobuhiro Sugimura
  • 学会等名: the 7th International Conference on Leading Edge Manufacturing in 21st Century, LEM21
  • 発表場所: 宮城
  • 年月日: 20131107-20131108
• [学会発表] Analysis of Kinematic Motion Deviations of Machining Centers Based on Geometric Tolerances (2013)
  • 著者名/発表者名: Atsushi Takahashi, Arata Yoshida, Wiroj Thasana, Nobuhiro Sugimura, Yoshitaka Tanimizu And Koji Iwamura
  • 学会等名: the 7th International Conference on Leading Edge Manufacturing in 21st Century, LEM21
  • 発表場所: 宮城
  • 年月日: 20131107-20131108
• [学会発表] A Simulation of Kinematic Deviations of Boring Processes on CNC Machining Centers (2013)
  • 著者名/発表者名: Wiroj Thasana, Atsushi Takahashi, Arata Yoshida, Nobuhiro Sugimura, Yoshitaka Tanimizu And Koji Iwamura
  • 学会等名: the 7th International Conference on Leading Edge Manufacturing in 21st Century, LEM21
  • 発表場所: 宮城
  • 年月日: 20131107-20131108
• [学会発表] 5 軸マシニングセンタの運動偏差のモデル化と解析に関する研究 (2013)
  • 著者名/発表者名: 吉田新，高橋淳，タサナウィローット，杉村延広，谷水義隆，岩村幸治
  • 学会等名: 2013年度精密工学会秋季大会学術講演会
  • 発表場所: 大阪
  • 年月日: 20130912-20130914
• [学会発表] 負荷平準化および搬送最適化を考慮した工具配分に関する研究 (2013)
  • 著者名/発表者名: 岩村幸治，古谷 大，谷水義隆，杉村延広
  • 学会等名: 2013年度精密工学会秋季大会学術講演会
  • 発表場所: 大阪
  • 年月日: 20130912-20130914
• [学会発表] 植物工場における生産コスト分析と生産計画 (2013)
  • 著者名/発表者名: 中井晃佑，杉村延広，谷水義隆，岩村幸治
  • 学会等名: 2013年度精密工学会秋季大会学術講演会
  • 発表場所: 大阪
  • 年月日: 20130912-20130914
• [学会発表] Modeling and Simulation of Closed-Loop Supply Chains Considering Economic Efficiency (2013)
  • 著者名/発表者名: Yoshitaka Tanimizu, Yusuke Shimizu, Koji Iwamura, and Nobuhiro Sugimura
  • 学会等名: IFIP WG 5.7 International Conference, APMS 2013
  • 発表場所: State College, PA, USA
  • 年月日: 20130909-20130912
• [学会発表] 加工時間の確率分布を考慮した工作機械への作業者配置とスケジューリング (2013)
  • 著者名/発表者名: 森田浩平，岩村幸治，谷水義隆，杉村延広
  • 学会等名: 日本機械学会2013年度年次大会大会
  • 発表場所: 岡山
  • 年月日: 20130909-20130911
• [学会発表] 生産システムにおけるリスクを考慮した設備投資に関する研究 (2013)
  • 著者名/発表者名: 岡田翔太，岩村幸治，谷水義隆，杉村延広，塩谷景一
  • 学会等名: 日本機械学会2013年度年次大会大会
  • 発表場所: 岡山
  • 年月日: 20130909-20130911
• [学会発表] A Closed-Loop Supply Chain Model for Parts Reuse Considering Economic Efficiency (2013)
  • 著者名/発表者名: Yoshitaka Tanimizu, Yusuke Shimizu, Koji Iwamura and Nobuhiro Sugimura
  • 学会等名: International Symposium on Scheduling 2013
  • 発表場所: 東京
  • 年月日: 20130718-20130720
• [学会発表] Assignment of Human Operators to Machine Tools and Scheduling Considering Statistical Distribution of Processing Times (2013)
  • 著者名/発表者名: Koji Iwamura, Hiroya Tagashira, Yoshitaka Tanimizu and Nobuhiro Sugimura
  • 学会等名: International Symposium on Scheduling 2013
  • 発表場所: 東京
  • 年月日: 20130718-20130720
• [学会発表] 作業者の教育計画に関する研究～生産計画を考慮した研修の優先度～ (2013)
  • 著者名/発表者名: 岩村幸治，田中健太郎，谷水義隆，杉村延広
  • 学会等名: 第57回システム制御情報学会研究発表講演会
  • 発表場所: 兵庫
  • 年月日: 20130515-20130517
• [学会発表] 工作機械の運動偏差のモデル化と解析に関する研究～5軸マシニングセンタのモデル化と運動偏差の解析～ (2013)
  • 著者名/発表者名: 高橋淳，吉田新，タサナウィローット，杉村延広，谷水義隆，岩村幸治
  • 学会等名: 第57回システム制御情報学会研究発表講演会
  • 発表場所: 兵庫
  • 年月日: 20130515-20130517
• [図書] Handbook of Research on Design and Management of Lean Production Systems (2014)
  • 著者名/発表者名: Yoshitaka Tanimizu, Vladimir Modrak, V. Kamala, Tony Lambert, Sudhanshu Joshi, Stefano Biazzo, S. Vinodh, S. Aravindraj, Roberto Panizzolo, Pedro J. Martinez-Jurado, Pavol Semanco, Paul Young, Paul Davis, Oladipupo Olaitan, Monica Bellgran, Michael Doukas, Manu Sharma, M. S. Shama, Kijpokin Kasemsap, 他15名
  • 総ページ数: 487 (338-357)
  • 出版者: IGI Global