人為的に発生する二酸化炭素の排出量は,自然界の吸収量の2倍を超えており,低炭素型社会の実現が希求されている.二酸化炭素排出量の低減を推進するには,環境保全の活動に経済的優位性を高める仕組みが必要であると考えられる.そこで,本研究では,これまでに提案した動的サプライチェーンモデルを拡張して,生産工程と輸送工程の二酸化炭素排出量を考慮したグリーンサプライチェーン(green supply chain)モデルを構築する.さらに,二酸化炭素排出量の最小化と利益・顧客満足度の最大化を考慮した多目的最適化手法を提案し,環境保全と経済成長を同時に考慮したグリーンサプライチェーン管理手法を確立する. 最終年度では,これまでに提案した最適化手法を拡張し,生産工程と輸送工程の二酸化炭素排出量を考慮したグリーンサプライチェーンの最適化手法を提案した.ここでは,工作機械の稼動に伴う二酸化炭素排出量を考慮した二階層サプライチェーンモデルの拡張を行った.さらに,進化型計算手法を用いた多目的最適化手法を適用し,生産および輸送の計画を動的に改善し,最適化することで,環境効率性を高める方法を提案した.さらに,グリーンサプライチェーンシミュレーションシステムのプロトタイプを開発し,計算機実験を行うことで,その有効性を示した.これにより,環境負荷低減と企業利益の向上を同時に実現する環境ビジネスモデルの一例を示すことができたと考えている.
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