研究課題/領域番号 |
23560134
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
武澤 英樹 工学院大学, グローバルエンジニアリング学部, 教授 (40334148)
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研究分担者 |
毛利 尚武 独立行政法人大学評価・学位授与機構, その他部局等, 教授 (90126186)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 放電加工 / レーザ照射 / 磁性材料 / 永久磁石 |
研究概要 |
本研究は,着磁後の永久磁石に対して放電やレーザ光を用いて局所的な加熱を行い,3次元的な形状の制御と磁化の制御とを「同時に」,あるいは「個別に」行うことのできる永久磁石の複合的な機能制御法の確立を目的としている. そのために本年度は,永久磁石の中でも磁力の強いネオジウム磁石を対象とした突き当て放電除去加工において,各種電気条件と加工後の表面磁束密度の変化を調べた.D.F.を50%と一定とし,電流値,パルス幅を変化させ入力エネルギを変化させた各種条件では,基本的にエネルギが大きくなると表面磁束密度の低下が大きいことがわかった.一方,あるエネルギ以下のでは磁石形状(高さ)が減少したことによる磁束密度低下のみで,放電加工に起因する減少は発生しない. さらに,エネルギの大きな条件で突き当て除去加工した後の,磁石内部方向の磁束密度変化を実験的に計測した.直径10mm,高さ10mmのネオジウム円柱磁石を電流値20A,パルス幅128マイクロセック,休止時間128マイクロセックの条件で初期1mmの除去加工を行い,その後1mmずつ,放電による磁束密度低下が発生しない条電流値5A,パルス幅32マイクロセック,休止時間32マイクロセックの条件で除去を繰り返すし,その都度表面磁束密度を機上で計測した.その結果,磁石高さが6mmになるまで磁石高さが減少しているにもかかわらず表面磁束密度は上昇した.これはエネルギの大きな条件で放電加工した磁石内部は,加工面よりした数mmの厚さに磁束密度の低下が発生している層が生成されており,それらの層を介した表面磁束密度を計測するとその値は大きく減少することによる.上記20Aの条件では加工面よりした3mmの厚さにおいて磁束密度の低下が発生していた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
永久磁石の3次元的な形状の制御と磁化の制御とを,「同時に」あるいは「個別に」機能制御する加工法を確立するために,平成23年度は,永久磁石の放電加工およびレーザ加工による加工特性の把握とそれにともなう磁束密度変化の調査を主目的として実験を進めてきた.放電加工については,各種電気条件および各種加工形状に対する実験を繰り返し,それぞれの実験における加工面および加工裏面の表面磁束密度の測定を繰り返した. その中で,磁石表面の全面における磁束密度分布を調べるために,2次元マッピング測定が可能な,2次元表面磁束密度測定装置を試作した.当初の予定では,細穴や細溝の内部を計測できる測定装置あるいは測定プローブの開発であったが,研究を進めるに当たり,まずは2次元マッピングの把握が重要と考え,上記装置の試作に至っている.現在,2台の平面磁束密度測定装置が稼働するに至っており,この先の計測手段として有効と考える.
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今後の研究の推進方策 |
初年度は,放電加工を主とした熱エネルギ加工における永久磁石の形状変化および表面磁束密度の変化を測定したので,2年目はレーザ照射による実験を進める予定である.このとき,既存のYAGレーザでは最小500マイクロセックのパルス幅であるため精密な形状加工は困難である.そのため,レーザ照射においては磁石形状が変化しない程度の入熱作用のみを与える実験を行う.スポット径,エネルギ,繰り返し照射回数等の条件を変化させ照射後の表面磁束密度の変化を調べる. 同時に,磁石内部の温度変化を測定するために,熱電対を磁石内部に埋め込み,数点の温度測定から,磁石内部の温度分布を推察する.磁石内部の温度分布計測は,放電加工においても実施し,レーザ照射と放電加工における比較を行う. さらに,未着磁のネオジウム素材に対して,放電加工により形状加工を行い,着磁メーカにて着磁を完了させ,その後表面磁束密度を詳細に測定する.着磁後の磁石に対して加工した場合との比較を行い,放電加工による入熱作用の影響を明確にする.
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次年度の研究費の使用計画 |
2年目の研究費の使用予定として,着磁メーカへ依頼する着磁処理費用が必要となる.一般的に小数個別の着磁は受け付けていないようであるが,関東近辺で2カ所ほど対応可能なメーカを探し出すことができ,依頼予定である.場合によっては専用の着磁コイルの製作を必要とする. 着磁,未着磁の磁石素材の購入は初年度同様に多数必要である.また,内部温度の測定のために測定装置の構築が必要である,熱電対,ノイズ対策,データロガー等の準備を進める. 初年度の実験データをまとめるとともに,各種学会発表,国際会議への参加を積極的にすすめ,その参加費等が必要となる.すでに,大学院2年生の国際会議へのエントリーは1件済んでいる.
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