研究課題/領域番号 |
23560134
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
武澤 英樹 工学院大学, 公私立大学の部局等, 教授 (40334148)
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研究分担者 |
毛利 尚武 独立行政法人大学評価・学位授与機構, その他部局等, 教授 (90126186)
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キーワード | 永久磁石 / 熱エネルギ加工 / 放電加工 / レーザ照射 / 表面磁束密度 |
研究概要 |
平成24年度は,前年の加工結果を踏まえ以下の内容を実施した. 1)放電加工中の磁石内部温度の計測・・・これまでの基礎実験により,平均入力エネルギの大きな放電条件で永久磁石を突き当て加工すると,加工後の表面磁束密度の低下が大きいことがわかっている.逆にエネルギを小さくした仕上げ加工条件では,磁石形状が変化した影響での磁束密度低下は見られるが,放電条件に起因した磁束密度低下は発生していない.そこで,両者の違いは永久磁石の温度特性による磁力の低下と考えられ,実際に放電加工中の磁石内部温度の計測を試みた.直径10mm,高さ10mmのネオジウム磁石の上面より下2mm,3mm,4mm,5mmの位置に,磁石側面から中心までの横穴(直径1mm)を空け,K型熱電対を埋めこんで温度測定を行った.放電条件を変化させた結果,入力エネルギが大きいと,磁石内部温度が高くなり,放電条件20A,パルス幅128マイクロセックでは,加工面2mm下で200度弱程度まで高温になる.一方,5A,32マイクロセックの条件では,同じ位置で80度程度であり,磁石の推奨使用温度85度以下であった.このように,放電加工後の磁束密度の変化は,基本的には磁石内部温度に依存することが確認された. 2)未着磁磁石素材への形状加工後の着磁状態・・・前年には,角10mm,高さ5mmの磁石中央部に直径3mmの底付き穴加工を行うと,加工面の対向面では,中央部が転極する現象が確認された.これは,穴直径と穴深さに密接に関係があると想像された.そこで,同様の形状で着磁前の磁石素材を入手し,放電加工により穴加工を行ってから,着磁メーカにて着磁処理を行った.その結果,穴対向面は着磁磁石を加工した場合のように転極することは無く,形状に依存した磁力の低下が観察された.これより,着磁磁石に形状加工することの意味が見いだされた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は,永久磁石を熱加工することにより,磁石形状およびその磁束密度を同時にあるいは個別に制御することを目的としている.これまでの結果より,放電加工で磁石高さを減少させるだけの突き当て加工を行う実験より,放電条件と磁石内部温度およびその加工後の表面磁束密度の変化の関係を把握することができている.これより,加工後に所望する磁束密度を得るためには,どの程度の放電条件を用いればよいか予測が可能となった.一方,磁石の中央に穴加工を行う形状変化を伴う加工においては,着磁磁石の形状が,徐々に変化する工程が重要であることがわかった.つまり,着磁前に形状加工を行い,その後着磁した磁石とは磁束密度の分布が大きく異なり,着磁している磁石の形状が徐序に変化する際には,磁石自身の発生する磁界の中で形状変化することによる磁束密度変化が発生すると推察された.これより,着磁磁石の熱エネルギ加工の意義が見いだされ,レーザ照射等の実験でも確認する必要が生じた.
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今後の研究の推進方策 |
本年度の実験結果より,磁石自身が発生する磁界中で形状が徐々に変化することで,これまでに無い磁束密度パターンが生じていることから,外部磁界を積極的に変化させ,その雰囲気の中で熱エネルギ加工を行う手法を試みる.外部磁界の向きや強さを変化させ,放電条件および磁石内部温度の変化と加工後の磁束密度の変化の関係を明らかとする.同様の影響をレーザ照射の場合についても検討する. 上記実験結果を踏まえ,汎用解析ソフトCOMSOLを用いて磁場解析を行う.初期には静磁場解析から行い,可能であれば外部磁界の変化や磁石自身の形状変化に伴う磁束密度の変化を解析したい. 次年度は最終年度であるため,上記実験結果と解析結果を突き合わせ,当初の目的である磁石の形状および磁束密度の同時あるいは個別制御のための指針をまとめる.
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は,磁石に対する各種加工が効率良く行えたことから,消耗材料の消費が抑えられた.その結果10万円強の予算残が発生したが,次年度は,研究の最終年度ということも有り,各種実験の推進のためには実験補助者に協力頂きながら,多数の実験と評価を進めてゆくつもりであり,予算の適正な使用を進める.また,各種外部磁場付与のための実験装置(ジグ等)の試作にも予算を使う予定である.
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