非接触熱エネルギ加工である放電加工やレーザ照射を用いて,永久磁石の形状加工と磁気特性,特に表面磁束密度を同時にあるいは個別に制御する手法の確立を目的に研究を進めてきた. はじめに,円筒形磁石の高さを減じる放電加工では,放電条件に依存する磁石内部温度の違いにより加工後の表面磁束密度が決定されることが明らかとなった.ただし,表面温度は同等であっても磁石内部温度の分布状態によっては磁束密度の値は異なることが予想された. 次に,角形磁石のN極中央部に底付き穴加工を施す放電加工では,加工穴深さに対応して穴対抗面(S極)面の表面磁束密度が変化し,S極面の中央に穴直径に対応したN極部位が発現し,磁気パターニングが生じる.その際,着磁前の磁石に穴加工を行い,その後着磁したサンプルと,着磁後の磁石を放電加工で底付き穴加工したサンプルでは最終形状は同一であってもS極面の磁気パターンは全く異なる.これより,着磁磁石の形状加工では,磁石自身が発する磁界中で磁石形状が変化していることが重要であると推察された. レーザ照射実験においても,磁石表面温度と内部温度の分布により表面磁束密度が決定されるが,放電加工とは異なり磁石全体の温度上昇が大きいため,磁気パターニングのためには磁石本体を冷却するなどの工夫が必要である. 上記の結果より,永久磁石の形状および表面磁束密度パターンの制御においては,形状変化に伴う磁束密度変化は必然的に生じる.ただし,放電加工条件を仕上げ条件のように入力エネルギの小さな条件で行えば,放電加工に起因する熱的な影響による低減はほとんど発生せず,形状変化による影響のみとする加工が可能である.一方,荒加工条件のように入力エネルギの大きな条件を用いれば,形状変化に加え熱的な影響による磁束密度の低減が相加的に現れることが明らかとなった.
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