研究課題/領域番号 |
23560141
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
水谷 秀行 中部大学, 工学部, 教授 (10201790)
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研究分担者 |
稲崎 一郎 中部大学, 中部高等学術研究所, 教授 (30051650)
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キーワード | 内面ホーニング / 超音波振動 / 砥石半径方向振動 / 切込み運動 / 電着砥石 / 寸法生成 / 表面性状 / 形状精度 |
研究概要 |
本研究で目指す高性能ホーニング加工法の実現には装置の開発が不可欠である。平成24年度は、23年度中に開発、製作された砥石半径方向の振動を励起する超音波振動装置を使用して各種材料のホーニング加工実験を行い、装置の性能評価と改良等を行った。 1.ホーニング実験に先駆け、従来の焼入れ鋼加工用のcBN砥石に加え、セラミックス材料加工用の電着ダイヤモンド砥石を設計、製作した。これらは振動耐久試験および砥石作用面の観察によって品質評価を行い実験に供した。 2.焼入れ鋼およびセラミックス材料(ジルコニア、炭化けい素)のホーニング加工において、いずれの場合も超音波振動の振幅増加に対応した寸法生成量が得られることから、超音波振動が砥石の切込み運動として作用し、材料除去および寸法生成に寄与していることが確認できた。これは機械加工における超音波振動の新たな効果の発現である。振動振幅と加工量(寸法生成量)の関係は加工材料によって異なるが、材料による両者の関係を予め求めておけば、実際の小径内面加工においてμmオーダーの寸法調整が可能となる。 3.本ホーニング加工法による仕上げ面粗さは、通常の定切込み内面ホーニングに比べて改善され、特に焼入れ鋼および破壊靱性値が高いセラミックスの仕上げ面には、クロスハッチパターンを描く切削条痕にそって超音波振動切削特有の加工模様が形成され、粗さの小さな表面が得られた。 4.実用化に際して消耗交換部品となる砥石部分の小型・高精度化と製作費低減に向けた改良設計および製作準備を開始し、今後の進展を図った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、特殊形状のホーニング砥石を設計・製作し、これを用いて砥石軸方向の超音波振動をこれまでに例のない半径方向のたわみ振動モードに変換する方法を見いだした。そして、この砥石半径方向の超音波振動を切込み運動として利用した小径内面加工用の新しいホーニング加工法の可能性を示すことができた。これらは加工技術の向上に資する有用な成果であり、当年度の成果は13.の研究発表(平成24年度の研究成果)に示すように、学会、研究会および技術フェアでの発表等、社会に向けての発信も行った。これら発表の中には招待講演や招待論文も含まれ、本研究が学術的、社会的にも注目を集めた結果と考えられる。 以上により、本研究は成果および社会への発信、いずれの点においても概ね所期の目標を達成し、順調に進展しているとの評価を行った。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、本研究課題最終年度として、各種材料に対する超音波振動ホーニング加工実験を一層推進する。これによって得られた基礎的知見をもとに実用化に向けた指針を示し、結果をまとめて公表する。具体的な研究推進計画は以下の通りである。 1.材料特性の違いによる加工性能の差異を寸法生成量、表面性状および砥石摩耗の観点から調査し、本ホーニング加工方法の適用範囲と高能率化のための加工条件を見いだす。 2.超音波振動ホーニングが仕上げ面粗さの向上に寄与することは既に確認しているが、今後は形状精度向上のための工具開発と加工条件についても探索を行う。 3.本開発技術の実用化に際して砥石は消耗部品となる。このため、砥石部分の製作コスト低減と砥石台金(ベース金属)再利用のための工具設計と試作ならびに性能試験を行う。 4.3年間の研究を総括し、学会発表および技術フェア等に出展するなど、成果の発信に努める。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、研究協力企業より工具および実験用材料等の提供が予想以上に得られ、また、人件費(謝金)支出が当初見込みを下回ったため、次年度繰越金が発生した。この繰越金は平成25年度交付額とあわせて、実験用材料および各種工具等の消耗品購入費、実験およびデータ整理のための人件費(謝金)、学会発表のための旅費などに充てる予定である。
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