本研究最終年度の平成25年度は、本開発技術の実用化に向け、装置の改良とその評価のための実験研究を推進した。 1.実験用超音波振動ホーニング装置の第1号試作機は、砥石ツールの回転運動を固定した工作物回転方式を採用したが、この方式では、工作物の大きさ・形状に制限があり、また、工作物回転用駆動装置を必要とするなど改良の余地があった。このため、スリップリングを用いた回転主軸取付け型のロータリー振動子を製作し、改良を行った。 2.これまでのホーニング砥石ツールは、砥石と振動子取付け用シャンク部を一体構造としていたが、ツールの製作精度および振動子への取付け再現性の向上を図るため、ツールシャンク部を精密コレットチャック(特注品)に代え、これを介して砥石を取付ける方式に変更した。これによって消耗部品である砥石部の構造が単純化され、砥石ツールの製作精度と振動子への取付け精度を向上させることができた。 3.改良装置の超音波振動特性をレーザ変位計によって調べた結果、砥石は半径方向に安定したたわみ振動を発生し、振幅は振動制御装置によって約30μmを上限として任意に制御することができた。 4.開発・改良を加えた超音波振動ホーニング加工装置および方法に対して評価実験を行った結果、(1)砥石半径方向の超音波振動の振幅制御によって小径穴の内径調整が可能であることを確認した。(2)内面ホーニングに必要な回転運動は、工作物側よりも工具側に与える機構・構造とする方が円筒形状精度を得る上で有利である。(3)超音波振動の援用によって焼入れ鋼および構造用セラミックスのホーニング仕上げ面粗さが向上することなどを明らかにした。小径内面の高精度加工技術の向上を目的とした超音波振動援用によるホーニング加工法の開発は、大手自動車部品メーカーからもその応用が注目され、今後の進展が期待されている。
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