研究課題/領域番号 |
23560142
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
田中 達也 同志社大学, 理工学部, 教授 (70434678)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 塑性加工 / 半凝固軽合金 / ECAP超微細加工 / インパクト加工 / 加工硬化 / サーボプレス機 / Liイオン電池用筐体 / 薄肉軽量化 |
研究概要 |
A3003系およびAC4CHアルミ合金を用いて,半凝固の有無(半凝固材をSS材と呼ぶ)およびECAPのPass数の影響を調べた.その結果,各材料の引張り強さ,破断ひずみの大きさは,A3003は110(MPa)で30(%)程度,AC4CH合金の焼き鈍し材は160(MPa)で8(%)程度となった.一方,半凝固の有無で比較すると,半凝固材は320(MPa),破断ひずみは22(%)で,半凝固化により引張強さが2倍,破断ひずみが3倍程度向上した.ECAP加工のPass数の影響では,Pass数の増加と共に,引張り強さを維持したまま,破断ひずみ(伸び)が大きくなり,SS-ECAP材は高強度でありながら,破断ひずみが向上することを確認できた. SS-ECAP材を用いて丸型筐体のインパクト成形を行った結果,以下のことが分かった.(1)SS-ECAP材では,インパクト加工時の最大圧縮荷重は加工数の増加と共に低下し,成形性が向上した.(2)材料の流動性に関しては,側面部および下部では,大きく圧縮を受けて流動し,SS-ECAP材における初晶及び共晶が引き伸ばされたような結晶組織になる.(3)インパクト成形性を各材料で確認した結果,AC4CH合金の焼き鈍し材は,成形品に割れや高さのばらつきは生じたが,A3003系やSS-ECAP材では生じない.(4)A3003,AC4CH焼き鈍し材,半凝固AC4CH材では,スラグと比較して成形品の硬さの値は高くなるが,ECAP加工のpass数の増加と共に,半凝固AC4CH材では加工硬化が生じず,硬さが低下する.割れないインパクト成形を実現するには,衝撃押出し中の加工硬化では高強度化(降伏点の上昇)せず,さらに加工硬化によっても,伸びが低下しないSS-ECAP材のスラグが製造するプロセスにおいて重要であることを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
AC4CH合金を用いて半凝固の有無やECAPのPass数の影響を丸型筐体のインパクト成形で検討した結果,金型精度の悪さから大きな肉厚分布(0.3~0.7mm程度)となったが,従来のPass数の増加による加圧力の低下やインパクト成形後も高強度ながら大きな伸びを維持していることなど今年度の目標であった丸型筐体についてはほぼ達成できた.また,肉厚分布が精度良く成形出来なかったことから,金型の課題を抽出した結果,高精度の角型筐体の金型を試作することが出来,次年度以降は,高精度の角型筐体の金型により超薄肉成形にトライする準備が整った.
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今後の研究の推進方策 |
ほぼ予定通りに角型筐体用の金型試作を終えている.今後は,この金型を用いて肉厚を変更し,超薄肉のインパクト成形を実施していく.また,A3003系の半凝固材に関しても,試作可能となる環境・設備(特に溶解炉など)が整い,所有するAC4CH合金以外のアルミ合金種へもトライしていくことが可能となったため,アルミ合金種の違いによる半凝固材の微細化への影響を確認していく.最終的な目標であるマグネ合金に関しては,半凝固マグネ合金材(主にはAZ91D)を製造できる装置の試作中であり,次年度以降に間に合うように検討を進めていく.
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の申請書に記載した計画通りの研究費の使用を予定している.
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