23年度から25年度までの全体の研究目的は、個人体型へ適合可能な身体装着製品、特に革靴の設計支援に応用可能な手法を開発することである。革靴の製作では先ず、足形状に合わせた靴型を作る工程がある。しかし靴型の製作コストが大きいため、個人に適合する革靴を製作するに際して、新規に靴型を作る方法以外に、既存の靴型のなかで個人に適合する靴型を比較評価し選定して利用する方法が考えられる。本研究ではこの既存の靴型から適合する靴型を選定する場合に必要な処理として、靴型の形状の違いを定量的に評価する手法を開発することである。靴型製作に必要な設計情報は、複数の特定の位置と傾きによる平面での断面輪郭形状を中心とした寸法や周囲長などであり、ここでは形状と形状から得られる数量などもまとめて便宜上、形状特徴量と呼ぶことにする。先ず、足形状から靴型を設計するために必要な形状特徴量を抽出する手順を検討し、基本的にかがみ式設計手法に基づいて行う方針とした。また、既存の靴型から形状特徴量を抽出するために、靴型を3Dスキャンした3次元点群データから設計手法に基づき、特定の位置・方向での断面情報を抽出して形状特徴量を抽出することにした。そして、複数の靴型の形状特徴量同士を比較することで、類似度評価を求める手法を開発した。25年度はこれらの複数の類似度評価手法での違いについて比較検討を行い、いずれの手法も有効であることがわかった。開発した手法は情報処理学会のグラフィックスとCAD研究会で発表し、国際会議International Conference on Applied Human Factors and Ergonomics 2012 で発表した。
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