研究課題/領域番号 |
23560152
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
川口 尊久 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60234043)
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研究分担者 |
畑沢 鉄三 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30114169)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 位置決め / 摩擦 / ナノスケール / 固体表面 |
研究概要 |
位置決めには,安定性の点から摩擦力を利用した方法が試みられている.本研究で扱う位置決めのための送り機構の基本原理は,接触する二面間の一方の面に繰り返し接線駆動力を与え,さらにこの駆動力にオフセット力を与えることで,正負方向の微小駆動を得るものである.この摩擦面の微小変位特性を用いて駆動することによりナノメータオーダの精密位置決めが可能であることを示すことを目的としている.本駆動方式の位置決めには,摩擦面の特性が重要であるため,その材質,表面粗さ,材質の組合せ,荷重および真実接触部の同定などをとあわせて種々の条件で実験を行うことで,その変位特性を明らかにする.本年度は,これまで用いてきた実験装置に高荷重での実験が行えるように改良を加え,基礎テータを得るための実験を行った.あわせて変位測定の安定化と広範囲化するためにセンサや制御方式について検討を行った.先ず,実験は荷重をこれまでの約100倍まで付加できるようにすることで,真実接触面積を大きく変化できるようにした.このことによりセラミックスなどの高硬度な材質を用いても安定した摩擦面を得ることができるようになった.以前行った荷重の約10倍の10.6Nで行った結果,接線力の与え方によってはこれまでの1nmの送りに加えて数nm~数100nmの大きさでも駆動できる結果が得られた.このことは位置決めにおいて,所要の移動量に応じて駆動量を微動および粗動を組み合わせて行うことができるものと考えられる.次に,変位を測定するセンサにリニアエンコーダ式を導入することにより1.2nmの精度でmm単位の範囲で移動量を測定できることを確認した.このことにより,本駆動方法でnmからmmの範囲でnm制度の位置決めができるようになると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
23年度の研究計画の中での進捗状況としては次のとおりである.(1)試料の製作:計画の黄銅とセラミックス試料のジルコニア(ZrO2)に加えて,平成24年度に予定している窒化ケイ素(Si3N4)と炭化ケイ素(SiC)の準備を行った.粗さについては所要の粗さになるように仕上げられることも確認している.(2)実験装置の製作:(1)駆動部の設計・製作では,非接触形駆動にボイスコイル形式のリニアモータを用いて,DCサーボアンプを介して,ファンクションジェネレータの信号を入力することにより駆動できるようにした.あわせて,コンピュータを用いた制御方式についても機材を準備し検討中である.(2)変位の測定には制度0.5nm静電容量形測定器で変位の測定を行なった.また,制度1.2nmリニアエンコーダを導入してmm単位の移動量を測定でいることを確認した.(3)変位特性の同定と微小送りの実験的検討1:本年度の実験で主に用いた試料と仕上げ方法は,粗い面の黄銅試料の接触面を,表面粗さを約5μmRzの等方性摩擦面になるように仕上げた.また滑らかな平面試料のジルコニアは,表面粗さが0.07μmRzの滑らかな面に仕上げた.まず(3)巨視的すべりを起こさない範囲の最大接線力f0(例えば1.5N)を求めた.次に(4)実験条件の決定f0を基準として,繰返し接線力(振幅) f1(0.2~1.5N),さらに繰返し接線力に加えるシフト量Δf(0.2~1.3N)を変化させて実験を行った.なお,振動数は5Hzで行なった.以上の条件で(5)種々のサイクル変位特性を測定した.その結果(6)1回の繰り返しで生じる微小変位Δδは,0.4~211nmとなる結果が得られた. 以上のことより,概ね計画の通りに進捗していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に得られた結果を基にして,試料の種類や装置の改良などを行なうことにより,微小変位特性を利用したナノオーダ送り機構が十分活用可能であるかどうかについて検討する.また,変位特性を真実接触部の測定とあわせて検討を行う.(1)試料製作:試料はセラミック試料(Si3N4,ZrO2,SiC)は用意したので,その粗さと組み合わせについて検討する.(2)接触部の測定については,スパッタ薄膜を用いて測定する方法を用いて観察することを予定している.(3)変位特性の同定と微小送りの実験的検討:平成23年度の実験結果を基にして,変位特性の測定を行う.特に「Δfの接線力オフセット量」,「繰り返し周波数」,「試料材質と表面粗さ」の変化に対する影響を重点的に検討する.(4)実験装置の改良:リニアスケールの導入に合わせてさらに実験装置の改良を予定している.(5)研究成果の発表を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度に得られた結果を基にして,平成24年度は実験装置の改良に必要な製作費と実験で必要な消耗品の購入を予定している.また,実験状況に応じて試料の製作も行うことを検討している.また,研究成果の発表等にも使用することを予定している.
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