研究課題/領域番号 |
23560159
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
深田 茂生 信州大学, 工学部, 教授 (70156743)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 精密位置決め / 精密機構 / アクチュエータ / 機械要素 |
研究概要 |
精密位置決め技術は,半導体製造装置や超精密工作機械および精密測定機などの基幹性能を支配する最も重要な基盤技術の一つであり,今後の着実な進展が期待されている.本研究では,最大1mm程度のストローク(ミリストローク)にわたってナノメートルレベルの直動分解能を持ち,センサレスで駆動可能なコンパクトで低コストな機構を実現するために,同軸二重型差動ボールねじとステッピングモータを一体化したリニアアクチュエータを開発することを目的としている.平成23年度にはアクチュエータ本体の設計と製作を中心に以下の内容を実施した. まず,設計製作する超高分解能ステッピングアクチュエータの基本構造と目標性能について基本的検討を行い,設計仕様を決定した.出力軸の実効ストロークを1 mm,位置決め分解能は5 nmを目標とし,差動リードと目標分解能から,ステッピングモータの角度分解能を決定した.次に仕様に基づき超高分解能ステッピングアクチュエータ本体の設計を行った.同軸二重型差動ボールねじとステッピングモータを一体化する構造とするために,差動ボールねじの入力軸にステッピングモータの歯状ロータを一体化する構造とした.差動ボールねじについては,入力軸外径32 mm・リード1.9 mm,出力軸外径16 mm・リード2.0 mm,差動リード0.1 mmとした.回転動力は市販ステッピングモータのステータ部を流用して発生することとした. 次に設計した超高分解能ステッピングアクチュエータの製作を行った.ボールねじの各部品と,ボールねじ入力軸に組み込むステッピングモータの歯状ロータおよび構造部品を製作した.また製作した部品を組み立てて同軸二重型差動ボールねじとステッピングモータを一体化した超高分解能直動ステッピングアクチュエータ本体を完成した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
超高分解能ステッピングアクチュエータの設計仕様としては,出力軸の実効ストロークを1 mm,位置決め分解能5 nmという当初の目標に即して決定した.また,超高分解能ステッピングアクチュエータ本体の設計についても,同軸二重型差動ボールねじとステッピングモータを一体化する構造としたことや,差動ボールねじ部の形状の決定についても当初の計画に従って進行させることができた.さらに,設計した超高分解能ステッピングアクチュエータの製作・組立についても計画に従って実施することができ,差動ボールねじとステッピングモータを一体化した超高分解能直動ステッピングアクチュエータ本体を設計製作するという平成23年度の当初計画を達成できた.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度には,製作した超高分解能ステッピングアクチュエータの性能評価と考察を行う.まず,製作した直動ステッピングアクチュエータの性能を種々の条件で測定するための実験装置を構成する.出力軸変位をナノメートルレベルで測定し,モータ回転角度をロータリエンコーダで測定する構成とする.変位特性を繰返し測定し,再現性と安定性を評価し,本アクチュエータの限界変位分解能を定める.測定した変位特性を,各部品単体のリード精度から予想された差動リード精度と比較して誤差要因を特定し,限界分解能の決定要因について考察する. 平成25年度には,さらなる高精度化のための対策として,誤差の再現性の評価と補正方法について検討するとともに,同軸二重型差動ボールねじによる限界性能の考察を行い,ねじ駆動という純メカ的方法による限界分解能と精度限界の決定要因を明らかにして,精密工学的見地から実用化への可能性と問題点を提示する予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度には製作した直動ステッピングアクチュエータの性能を種々の条件で測定するための実験装置を構成する.出力軸変位をナノメートルレベルで測定し,モータ回転角度をロータリエンコーダで測定する構成とし,軸方向負荷を加えた状態で測定できるように負荷装置を備える計画である.この実験装置を構成するために出力軸変位測定用の変位計を本研究費により備品として購入する予定である.また,実験システムをオンラインで計測制御するためのインターフェイスおよび電子部品を消耗品として購入する予定である.
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