研究最終年度である平成25年度は、予定通り、実験範囲をベースオイルあるいはそれに添加剤を加えたものによる境界潤滑を施した領域に拡張した。これにより、しゅう動のごく初期に摩擦面の局所に発生した凝着物が長期のしゅう動期間にわたって残留すること、それら凝着物の発生頻度と規模が、その後のしゅう動現象が良好に推移するかどうかの「分水嶺」に大きく影響すること、という新たな知見が見いだされた。摩擦面における摩擦位置(あるいはタイミング)を基軸として多元種類の情報を客観的に複合解析するという本研究の特色が、この知見を確証する上で極めて重要な貢献を果たし、本研究は一定の成果を収めることができたと考える。 この知見により、研究計画当初の「(慣らし運転中の)摩耗粉の成長具合と脱落頻度」がその後のしゅう動現象を左右する」という想定は、昨年度まで検討してきた無潤滑条件については適用可能であるが、境界潤滑条件に関しては棄却することとなった。 本研究が明らかにした今後の技術的課題は以下の2つである。1)無潤滑下のしゅう動に対して、凝着物の成長具合と脱落頻度を表現可能なルール(アルゴリズム)を見出すこと、そして2)境界潤滑下のしゅう動に対して、しゅう動初期の凝着発生位置と凝着の規模を決定する要因を明らかにすること。 本研究の成果の公表に関しては、平成24年度以降年1回程度の頻度で国内学会での発表を予定していたが、予定を上回る成果を上げることができたため、平成25年度中に国内学術会議にて4件、海外の国際会議にて2件、国内の国際会議にて1件の学術発表を行った。さらには平成26年度の国内学術会議に1件、海外での国際会議に2件の発表も申込み済みである。また、査読を伴う海外学術雑誌に2件の論文を投稿し、掲載決定している。
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