研究課題/領域番号 |
23560164
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
高瀬 康 九州工業大学, 工学部, 技術専門職員 (30508445)
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研究分担者 |
野田 尚昭 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40172796)
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キーワード | 連続体力学 / 破壊 / 疲労 / 機械要素 |
研究概要 |
平成23年度の研究により,課題①ナットの緩み,②ねじの強度,各々を,前提条件(M16ボルト・ナット,ナットねじ山8,ボルト・ナット間クリアランス0μm)のもとで,最適化するための方向性を確認できた.すなわち,ナットのピッチ差をボルトよりα大きい条件で課題①,②の双方を満足させうる最適値としてα=2~3μmを見出した.しかし,外部有識者の意見を参考に実用化を前提に考え,クリアランスを無視(0とする)できないとの判断に至った.したがって,平成24年度以降は,クリアランスを前提にした研究に切り替えた.平成24年度の研究は,前提条件をM16ボルト・ナットで従前同様であるが,クリアランスを125μm(変動幅のほぼ平均)として,①ナットの緩み,②ねじの強度について実験とFEM解析による検討を行った. ①緩み止めに関する結果 α=0~42μmで,締付けトルク70N・mにて,米国航空規格(NAS3350)に合致する緩み試験機を使用し,高速ねじ緩み実験を行った.並行して弾塑性有限要素法を用いて,ボルト締結体の緩み防止の原因を解析し考察した. (1)α=33~36μmは,本実験の範囲において最適であった.αがこれ以下では緩みのリスクがあり,これ以上では締結軸力の低下が生じた.(2)ナットの緩みは,αにともなうナット両端部に対応する位置におけるボルトねじ山の塑性変形によって,防止されることを見出した. ②疲労強度向上に関する結果 ピッチ差0, 5, 15μmで,ねじ谷における応力のFEM解析と平行して疲労試験を一応力水準で行った. (1)ピッチ差を設けることによって長寿命化し,最も寿命の長いα=15μmでは約1.5倍となった.(2)ピッチ差を設けることで,ねじ底No.1(ナット先端側)の応力が低減でき,寿命最長のα=15μmではNo.7, N0.8(ナット後端側)が高応力状態になることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
解析条件の基本内容を実用化の観点から変動させざるをえなかったため,初年度計画の課題に改めて取組み,満足できる成果をうることができたものの,当初の達成年次より,0.5年程遅れたため,達成度を(2)とした.以下具体的に課題毎に記述する. クリアランスを前提にしたモデルに変更して,23年度と同様の研究課題に取組み,①クリアランス(半径125μm)を有する解析モデルを設定し,②ピッチ差のボルト・ナット締結体の緩み止め効果への影響についても,①のモデルに基ずく試験体を作成して振動衝撃試験を用いたゆるみ試験を実施し,最適ピッチ差の範囲を求めることができ,平行して③緩み止め効果とピッチ差との関連を理論的に究明するためボルト・ナット間の接触力に注目し,塑性変形の大きさの影響を明らかにした.④ピッチ差の疲労強度への影響については,①に基ずくボルト・ナット締結体で構成された試験機を作成し,引圧疲労試験機を用いて有限(時間)寿命(一般に107回をもって無限寿命として,その時の強度を疲労限とされるが,ここでは時間と費用の点から有限回で破断させる条件を採用)に対する最適ピッチ差を求めた.⑤前記③,④の結果から,ピッチ差の最適化によって緩み難くて,疲労寿命を20%以上改善できるボルト締結体の可能性を明らかにできた.
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今後の研究の推進方策 |
前年(24年)度には,当初モデルを大きく変更して,ボルト・ナット間のクリアランスの存在を前提にして,実用化を考慮したものにした. (1)幸い,主要課題①ボルトの緩み防止,②疲労強度向上共に目標に添った成果がえられたが,②に関しては,十分な実証がえられていなかったので,25年度には,実施したい. (2)また,②で目標通りの成果がえられなかった場合には,その改良策についても検討し,少なくとも数値的な検討を行ない,方向性を明確にして,実用化に一歩でも近づけて行きたい.
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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