研究概要 |
平成24年度の研究により、(1)ナットの緩止め効果に関しては、緩み試験とFEM解析を行った結果、ボルトとナットのピッチ差α=33~36μmが最適条件であった。(2)ねじの疲労強度向上に関しては、疲労試験を行った結果、α=0,15,30μmの中で、α=15μmの寿命が最も長く、α=0μmに対して有限寿命1.5倍となった。 本年度は、まず(2)疲労強度の向上に関して、昨年度の結果を詳細に調査したところ、α=15,30μmで疲労限度が上昇しないことがわかった。そこで、疲労限度の向上を目的とした新形状の検討を進めた。具体的にはボルトねじ谷半径ρを大きくしてねじ谷底の応力緩和効果を解析する。そこで、ρを0.29mm(現状)に対して2、3倍にして、通常のM16ボルト・ナットと比較検討を行った。①まず、形状効果を簡易的に評価した。単独ねじ底の場合の応力集中係数(環状溝付丸棒の引張り)は、規格モデル(1ρ)でKt=4.53、2ρ、3ρモデルでそれぞれKt=2.90(1ρの64%)、Kt=2.34(1ρの52%)である。 ②ボルト・ナットモデルでピッチ差α=0の解析結果を耐久限度線図で評価した。最大応力振幅は第1ねじ底に生じ、規格モデル(ρ=1)では、みかけの耐久限界に対して超過分(疲労破壊の厳しさ)500MPaであるが、2ρでは190MPa、62%減少する。3ρは、検討中。 ③ピッチ差α=15μmを付与した場合、最大応力(応力振幅)は、第7ねじ谷底に生じる(第8ねじ谷底での解析値は、不完全ねじの効果を評価できないし、疲労限度で危険部にならないので検討から外す)。最大応力振幅は、規格モデル(1ρ)では超過分655MPa、2ρモデルでは300MPa、1ρより54%減少することがわかった。3ρモデルについては、現在検討中である。 以上より、ねじ谷半径を2倍(3倍も検討)にすることで疲労強度を目標(30%向上)にそって、向上できる見通しが得られた。
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