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2011 年度 実施状況報告書

異方性エッチング加工による非対称微細構造表面におけるトライボロジ特性の解明

研究課題

研究課題/領域番号 23560166
研究機関札幌市立大学

研究代表者

三谷 篤史  札幌市立大学, デザイン学部, 講師 (70388148)

研究分担者 松尾 保孝  北海道大学, 電子科学研究所, 准教授 (90374652)
研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワードトライボロジー / マイクロファブリケーション / 異方性エッチング / 振動輸送
研究概要

異方性エッチング加工による非対称周期構造表面を開発した.酸化膜で被覆した面方位<221>面を表面とするシリコン基板上に5~10ミクロンピッチのライン&スペースパターンを生成し,シリコン基板をエッチング液に浸漬させ,周期的な非対称三角形構造を生成した.ここでは,フォトマスクの厚さやエッチングの温度,浸漬時間を変更することで,断面形状の異なる加工表面を3種類生成した.得られた非対称周期構造表面を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて計測し,非対称性と均一性を検証した.その結果,各表面の周期構造が非対称性を有しているだけでなく,従来の加工表面よりも全体的に均一性が高いことが分かった.次に,表面の摩擦特性を検証するための実験を実施した.当初は,接触式摩擦計測装置HEIDON Tribogear HHS:2000(新東科学)によるエッチング加工表面の摩擦計測を実施する予定だったが,接触針により加工表面が傷つき,表面の接触特性が大きく変わることが判明したため,微小物体の摩擦角計測のみを実施した.微小物体として,0402型セラミックチップコンデンサ(サイズ:0.4×0.2×0.2 mm, 重量:0.1 mg)を採用した.各表面を用いて,温湿度が一定な環境下で摩擦角計測実験を実施し,落下した個数及び落下角度を計測した.その結果,全ての表面において摩擦の非対称性が見られた.さらに,微小物体の輸送実験を実施し,一方向輸送の実現性を確かめた.基板実装型単層セラミックチップコンデンサ(サイズ:0.25×0.25×0.35 mm, 重量:0.06 mg)の輸送実験において,輸送時における微小物体の運動を秒間1000フレーム程度の高速度カメラで撮影した.その結果,微小物体は一方向に輸送されているものの,揺動運動や表面に垂直な軸周りの回転運動が生じており,安定性および効率の低下を招いていることが分かった.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

これまでの研究において,異方性エッチング加工による非対称周期構造表面の開発に成功している.特に,エッチング加工のパラメータを調整することにより,表面形状にバリエーションを持たせることにも成功している.得られた非対称周期構造表面の特性については,走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた計測により断面形状を検証する方法と,摩擦角計測により摩擦係数及び摩擦の非対称性を検証する方法をそれぞれ実施している.それらの結果,異方性エッチング加工による非対称周期構造表面が一方向輸送に必要な非対称性を有していることを証明できた.なお,摩擦特性については,接触式摩擦計測装置による摩擦計測は未実施であるが,計測に伴う表面へのダメージによる特性の変化を避けるためである.また,これらの表面を用いて,微小物体の一方向輸送を実現できており,異方性エッチング加工表面の適用可能性については証明できた.今年度の成果は,本研究課題の目的である,「凝着力の効果を含む微小物体の動特性を導出する」ための基礎となる研究であり,このまま順調に推移していけば最終的に本目的を達成できるものと考える.

今後の研究の推進方策

平成23年度に開発した非対称周期構造表面を用いて,微小物体の輸送実験を実施し,フィーダの駆動周波数と輸送速度の関係を明らかにする.特に,輸送時における微小物体の回転運動や揺動運動が,輸送の安定性および輸送効率に影響を及ぼすことがわかっている.そこで,輸送時における微小物体の運動を秒間1000フレーム程度の高速度カメラで撮影し,輸送の安定性を検証する.特に,微小物体の輸送方向に対して水平な方向と,表面に垂直な軸方向からの撮影を実施し,微小物体の揺動運動や回転運動,跳躍を正確に捉える.これらの検証を元に,微小物体の位置および姿勢に関するダイナミクスを同定する.平成23年度に実施を断念した接触式摩擦計測装置による摩擦係数測定の代替案として,より微小な加重の印加が可能なナノインデンターシステム等の適用を試みる.また,非対称周期構造表面へのパターン生成によるハイブリッド表面を開発する.ここでは,キリギリスの足表面に存在する六角形の微細なパターンが,摩擦力の低減および安定化に効果がある点に着目する.非対称周期構造上に再度フォトジストを塗布し,六角形形状をパターン化したフォトマスクを用いて再度エッチングを実施する.これらの行程により,非対称三角形と六角形が組み合わされたハイブリッド表面を開発する.特に,六角形のパターン生成と異方性エッチングの順番を入れ替えるなど試作を繰り返し,高精度かつ高効率な表面生成法を検討する.また,これらの工程により得られるハイブリッド表面の特性解析を,これまでの研究において用いた方法に基づいて実施する.特に,六角形パターン生成を行っていない表面と比較することにより,パターン生成の効果を検証する.また,ハイブリッド表面を用いて微小物体の輸送実験を実施し,ハイブリッド化が輸送に及ぼす影響を検証すると共に,実験結果を基に微小物体の動特性を検証する.

次年度の研究費の使用計画

平成24年度においても,引き続き異方性エッチングによる非対称周期構造表面の開発を実施する.そのため,それらにかかるシリコンウェハなどの材料費,エッチング液などの消耗品が必要となる.特に,ハイブリッド表面の開発にはエッチング用フォトマスクの開発が必要となる.エッチング加工による非対称周期構造表面の生成には,北海道大学創成科学共同研究機構オープンファシリティにあるマスクアライナとエッチング装置を利用する.これは,使用する機材の種類や時間に応じて従量的に課金されるシステムであり,そのシステムに準じた経費が必要となる.輸送実験に際しては,ビデオカメラやセンサヘッドを固定するための治具などを開発するため,それらに必要な部品を購入するとともに,センシングに必要な配線やフィルタ回路を開発するための電子部品を購入する.研究の遂行に伴う実験は多岐にわたるため,輸送実験およびその実験結果の記録・解析においては大学院生に研究補助を依頼する.前年度においては,研究補助学生の都合により従事時間が短縮されたため,研究費に残額が発生した.これらの分も含めて今年度の謝金を執行する.研究成果は,日本ロボット学会や計測自動制御学会の学術講演会および学術雑誌にて発表するため,それらにかかる出張旅費および投稿料を拠出する.ナノインデンターシステムとして,アジレント社のNano Indenter G200の適用を試みる.これらにかかる施設使用料が必要となる.

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] A Study on the Motion of Micro-Parts on a Saw-Tooth Surface by the PTV Method2012

    • 著者名/発表者名
      Phuong Hoai Le, Thien Xuan Dinh, Atsushi Mitani, and Shinichi Hirai
    • 雑誌名

      Journal of System Design and Dynamics

      巻: Vol.6, No.1 ページ: 73-80

  • [学会発表] 非対称微細周期構造表面による微小物体の振動輸送2012

    • 著者名/発表者名
      三谷篤史
    • 学会等名
      独立行政法人産業技術総合研究所講演会(招待講演)
    • 発表場所
      筑波
    • 年月日
      2012.3.23
  • [学会発表] トライボロジーの観点から見る接触・変形現象の解析2012

    • 著者名/発表者名
      三谷篤史
    • 学会等名
      感性フォーラム2012札幌
    • 発表場所
      札幌市
    • 年月日
      2012.3.10
  • [学会発表] Evaluation of Feeder Surface Materials for Microparts Feeding Using an Asymmetric Fabricated Surface with Symmetric Vibrations2011

    • 著者名/発表者名
      Atsushi Mitani, Shinichi Hirai
    • 学会等名
      IEEE/IES International Conference on Mechatronics
    • 発表場所
      Istanbul, Turkey
    • 年月日
      2011.4.13
  • [学会発表] Feeding of Microparts along an Asymmetric Surface Using Horizontal and Symmetric Vibrations - Development of Asymmetric Surfaces Using Anisotropic Etching Process of Single-Crystal Silicon -2011

    • 著者名/発表者名
      Atsushi Mitani, Yasutaka Matsuo
    • 学会等名
      IEEE International Conference on Robotics and Biomimmetics
    • 発表場所
      Phuket Island, Thailands
    • 年月日
      2011.12.8

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公開日: 2013-07-10  

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