研究課題
本研究では,スリップ流れの有無によるせん断流量の不連続性により負荷を発生させる,スリップスラスト軸受の作動原理の解明を目的とする.光ファイバー式超小型圧力センサを用いて測定した圧力は,親水部から撥水部への流入境界で高く,その前後の円周方向で共に低くなり,撥水部から親水部に向かう境界では僅かな負圧が発生する.表面張力による親水性潤滑面間への潤滑剤の侵入と,この僅かな負圧の効果により,安定した潤滑剤の供給がなされていると判断できる.一方,半径方向での圧力は,半径幅の2/3程度の位置で高く,その前後では低い値を示す等,一般的な軸受で観測される圧力分布と酷似した傾向を示す.150, 300, 500nmの溝部(撥水処理部)を有する3扇ステップスラスト軸受の場合,300nmの段差を有する軸受での摩擦が最も低く,溝部を親水化した(壁面スリップが発生し難い)軸受の1/4程度の低摩擦(μ≒0.0005)を実現できた.軸受の潤滑面に表面波を伝播できるセンサにつき,シミュレーションによりキャビティー観測の可能性を確認した.しかし探触子の小型化に限界があったため,申請時の点焦点型探触子での観測に立ち返り,観測結果に対し,キャビティーの存在による反射波の位相変化の程度を評価できる処理法を新たに導入した.その結果,撥水処理面での微小キャビティー発生の可能性を高めることができたが,発生の確証とその挙動の詳細な検討は今後の課題として残る.部分孔埋型多孔質スラスト軸受の摩擦は,全面孔埋軸受の1/20以下と低く安定する.多孔質体穴部の停留気泡とそこでの潤滑剤スリップを考慮した新たな潤滑メカニズムを,超音波観測結果を基に提案できた.本軸受構造の実用化に向けた新課題となる.また流体潤滑下では緻密部が,混合潤滑では逆に多孔質部が多い軸受で低摩擦となる等の一般的な摩擦特性も確認できた.
すべて 2013 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件)
日本機械学会論文集(C 編)
巻: 79 ページ: 2164-2173
Journal of Advanced Mechanical Design, Systems, and, Manufacturing,JSME
巻: 7 ページ: 594-607