研究課題/領域番号 |
23560169
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研究機関 | 日本工業大学 |
研究代表者 |
張 暁友 日本工業大学, 工学部, 准教授 (30431985)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 機械要素 / 放電加工 / 磁気駆動 / アクチュエータ |
研究概要 |
本研究では従来の放電加工機に取り付け可能な,高速,高精度,大ストロークを有する磁気駆動アクチュエータを開発し,放電加工の高速化,高精度化,高機能化を目指す. このため,本年度では,まず磁気軸受と静圧空気軸受を併用したロータの案内機構を検討した.有限要素法を用いた磁場解析ソフトを用いて,ラジアル磁気軸受とスラスト磁気軸受の構造を探索して設計した.また,有限要素解析ソフトを用いて静圧空気軸受の設計を行った. それから,高速・高精度・大ストロークを有する多自由度制御型,放電加工用アクチュエータを設計して試作した.提案するアクチュエータでは,ロータの軸方向の運動は,ミリメートルオーダのストロークを実現することが可能なボイスコイルモータ型のスラスト磁気軸受より制御され,その径方向と傾き方向の運動は,ロータを支えているパーツ(可動部)に取り付けたラジアル静圧空気軸受より拘束されている.また,ロータ及びロータを支えている可動部の軸方向と傾き方向の運動は,スラスト静圧空気軸受で拘束される.それらの径方向の運動は,大ストロークを実現することが可能なラジアル磁気軸受により制御される.ロータの軸方向と径放向の運動は,測定範囲2mm,分解能0.5μmの変位センサで測定される.試作アクチュエータの寸法は高さ151mm,幅179mm,重さ9kg程度である. 最後,試作したアクチュエータの制御系を検討した.アクチュエータのコントローラには,定常誤差を取り除くための積分器と制御系を安定させるための分母2次分子2次のレギュレータを採用した.また,電磁石のバンド幅を拡大するため,PIコントローラを適用した電流フィードバックループを導入した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,電極の位置・姿勢を高速・高精度に補正可能な,大ストローク5自由度制御型アクチュエータの研究開発を一つの目的としている. 平成23年度には,磁気軸受と静圧空気軸受を併用したロータの案内機構を検討し,高速・高精度・大ストロークを有する多自由度制御型放電加工用アクチュエータを設計して試作した.また,試作したアクチュエータの制御系を検討した.そこで,本年度の研究配開発はおおむね順調に進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
まず,電極の大ストロークの高速・高精度な位置決め・軌跡制御を実現できる制御系を構築する.本研究では,試作するアクチュエータはDSP(Digital Signal Processing)によるデジタル制御で行う予定である.制御プログラムはMathwork社のMATLAB/Simulinkで作成する.ロータの軸方向と径方向の変位を測定する変位センサの出力をアンプで増幅した後,16ビットのA/Dコンバータを介してDSPボードに取り込まれる.一方で,演算後の制御信号は,14ビットのD/Aコンバータを介して,リニアパワーアンプで増幅され,電磁石に印加される.また,電磁石に流れている電流を電流センサによって測定し,A/Dコンバータを介してDSPボードに取り込まれ,電流のフィードバックル制御を行う. それから,多自由度制御型アクチュエータの制御性能を評価する.具体的に,アクチュエータの目標値特性(制御帯域),位置決め特性,及びストロークの検討を行う.また,アクチュエータの軌跡制御特性の検討を行う. さらに,試作の放電加工用磁気駆動多自由度アクチュエータを既存の形彫放電加工機に取り付け,放電加工実験を行う.アクチュエータの適用による放電加工速度の向上への有効性の確認,ならびに,加工精度や加工表面あらさの検証を行う予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は,試作アクチュエータを制御するための電気部品費,および放電加工するための加工物,加工液,電極などの部品費を計上している. また,本研究の研究成果を社会・国民に発信するため,日本機械学会や精密工学会などの学術講演会を積極的に出席する.このための国内旅費を計上している.一方,海外に発信するため,研究代表者がAmerican Society for Precision Engineering (ASPE) , European Society for the Precision Engineering and Nanotechnologies (euspen),Asian Society for Precision Engineering and Nanotechnology (ASPEN)などの総会などを出席する予定がある.このための海外旅費を計上している.また,研究成果をまとめて,積極的に日本機械学会誌論文集,精密工学会誌やPrecision Engineering誌などに投稿する予定がある.このための学会誌投稿料を計上している. さらに,2名の学生にアクチュエータの性能評価,放電加工実験の補助をしてもらうための謝金を計上している.
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