研究課題/領域番号 |
23560169
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研究機関 | 日本工業大学 |
研究代表者 |
張 暁友 日本工業大学, 工学部, 准教授 (30431985)
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キーワード | 機械要素 / 放電加工 / 磁気駆動 / アクチュエータ |
研究概要 |
本研究では,ミリメートルのストロークを有する,高速・高精度な多自由度制御型磁気駆動アクチュエータの開発,およびそれを用いた放電加工の高速化,高精度化,高機能化,微細化の実現を目的としている. 昨年度では,多自由度磁気駆動アクチュエータを提案・試作し,その制御系を設計した.本年度では,まず,電極の高速・高精度な位置決め,軌跡制御を実現できるアクチュエータ駆動・制御系を構築した.アクチュエータの制御は,DSP(Digital Signal Processing)によるデジタル制御で行い,サンプリング周波数は10kHzである.電極の軸方向と径方向の変位を測定する変位センサで取得したアナログ信号を16ビットのA/Dコンバータを介して,DSPボードに取り込まれ,演算処理が行われる.演算後の制御信号は14ビットのD/Aコンバータを介して,リニアアンプで増幅され,電磁石に印加される. それから,試作アクチュエータの位置決め性能の評価を行った.電極を回転させない状態で,磁気駆動アクチュエータの軸方向と径方向にそれぞれ10μmのステップ信号を与えた場合,オーバーシュートがゼロになった.このため,試作アクチュエータを用いて放電加工のとき,電極が加工物との衝突を回避することが可能となる.また,アクチュエータの軸方向と径方向には,2mmのストロークを実現した.放電加工のとき,電極を高速にジャンプさせて加工屑の排出が可能となり,微細楕円穴などの創成加工も可能となる.さらに,アクチュエータの位置決め分解能は,軸方向1μm,径方向0.75μmを,バンド幅は,軸方向101Hz,径方向55Hzを実現した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,ミリメートルのストロークを有する,高速・高精度な多自由度制御型磁気駆動アクチュエータの開発,およびそれを用いた放電加工の高速化,高精度化,高機能化,微細化の実現を目的としている. 平成23年度には,磁気軸受と静圧空気軸受を併用したロータの案内機構を検討し,高速・高精度・大ストロークを有する多自由度制御型放電加工用アクチュエータを設計して試作した.また,試作したアクチュエータの制御系を検討した. 平成24年度には,電極の高速・高精度な位置決め,軌跡制御を実現できる,試作アクチュエータ駆動・制御系を構築し,その位置決め性能の評価を行った.試作アクチュエータは,2mmのストローク,1μm以下の位置決め分解能,軸方向には101Hz,径方向には55Hzのバンド幅を実現した.そこで,本年度の研究開発はおおむね順調に進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
まず,多自由度制御型アクチュエータを従来放電加工機に取り付け,放電加工速度の向上への有効性の確認,ならびに,加工精度や加工表面あらさの検証を行う予定である. 直径100μm以下の細穴が必要な自動車用燃料噴射ノズル,航空用タービンブレードをはじめ,医療機器,光通信機器,精密機器などにおいて,環境への配慮やエネルギー効率の向上といった高性能化のため,さらに小さく精密な微細穴が要求されている.このため,開発した多自由度制御型アクチュエータを用い,直径が100μm以下,アスペクト比が10以上の微細穴の高速・高精度な放電加工方法を検討していく. さらに,電極の多自由度制御による創成加工や,微動動作によるマイクロ加工方法を検討し,放電加工の高速化,高精度化,高機能化,微細化の実現を目指す.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度では,試作アクチュエータを既存の放電加工機に取り付けるための機械部品費や,試作アクチュエータを利用して放電加工するための加工物,電極,加工液などの消耗品費,およびAFMやSFMなどを用いた加工対象の評価の消耗品費などを計上している. また,本研究の研究成果を社会・国民に発信するため,日本機械学会や精密工学会などの学術講演会を積極的に出席する.このための国内旅費を計上している.一方,海外に発信するため,研究代表者がAmerican Society for Precision Engineering (ASPE) , European Society for the Precision Engineering and Nanotechnologies (euspen),Asian Society for Precision Engineering and Nanotechnology (ASPEN)などの総会を出席する予定があり,外国旅費を計上している.また,研究成果をまとめて,積極的に日本機械学会誌論文集,精密工学会誌やPrecision Engineering誌などに投稿する.このための学会誌投稿料を計上している. さらに,2名の大学院生に放電加工実験の補助をしてもらうための謝金を計上している.
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