研究課題/領域番号 |
23560172
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研究機関 | 福井工業大学 |
研究代表者 |
神田 一隆 福井工業大学, 工学部, 教授 (60091675)
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研究分担者 |
玉置 賢次 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, その他部局等, 研究員 (20463052)
中村 健太 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, その他部局等, 研究員 (20556849)
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キーワード | ダイヤモンド / CVD / 真空 / 摩擦係数 / トライボロジー / アルゴン / 黒鉛 / 超潤滑 |
研究概要 |
前年度までの研究では、摩擦熱の影響でCVDダイヤモンドが黒鉛化し、超低摩擦係数を発現することが確認されていた。このことは、摩擦面にかかる荷重が増えると、発熱量が増え、ダイヤモンドの黒鉛化がより促進され、さらに摩擦係数が低くなる現象からも確認された。しかしながら、真空中では相手材として使われる金属の種類によって摩擦係数が大幅に異なるという現象は説明できないという問題が残った。 そこで、本年度からは真空中で超低摩擦係数を発現する金属とそうでない金属の摩擦面や摩擦部周囲の摩耗粉をマン分光分析で解析した。その結果、真空下で0.05以下の超低摩擦係数となる組合せでは摩耗粉が黒鉛のようなラマンスペクトルを示し、高い摩擦係数となる場合には非結質炭素(DLC)のようなラマンスペクトルを示すことが明らかとなった。このことは、真空下で低摩擦係数を示す組合せは安定して摩擦係数の低い黒鉛を生成していることを示している。同様な試験をアルゴン中で実施したところ、真空中と同じ結果が得られ、アルゴン中でも真空中と同じ条件の試験ができることがわかった。 以上のことから、ダイヤモンドを安定に黒鉛化する触媒の役目を果たす元素の存在がCVDダイヤモンドの真空下での超潤滑現象を発現していることが推測された。これらの成果はトライボロジー学会等で発表している。 別の課題であるCVDダイヤモンド膜の平滑化に関しては、ダイヤモンドコーティング装置が稼働を開始し、研磨で平滑化が容易なCVDダイヤモンドを試作することができるところまできた。合成領域の拡大が次期の課題として残った
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度はCVDダイヤモンドが真空中で超潤滑現象を発現するメカニズムを解明するための実験を行うこと、および平滑なCVDダイヤモンドを得るため、CVDダイヤモンドコーティング装置を完成させ製造段階から平滑化するための研究をおこなうとともに、成膜後のCVDダイヤモンド膜を平滑化する研究を開始することを本年度の目標とした。 主テーマである、真空中でCVDダイヤモンドが超潤滑現象を示すメカニズムの解明はほぼ最終段階に近付いており、平成25年度に行ういくつかの補足実験を行うのみとなっている。したがって、この課題については達成度は100%である。 平滑CVDダイヤモンド膜を作製する研究は、CVDダイヤモンド合成装置を完成させ成膜試験を開始したところである。まず、成膜後に研磨の容易なCVDダイヤモンド膜をコーティングする試みを行い、実際に研磨してみたところ、鏡面レベルの表面を得ることができた。しかし、そのようなCVDダイヤモンドが合成できる領域が狭いので、その改善が今後の課題である。この課題は平成25年度までの予定であり、現在のところ達成度は90%程度である。そして、研究課題を総合的に見た場合の達成度は95%程度である。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の当初予定は、超潤滑現象のメカニズムを明確にするとともに、これを安定的に実現するための方策を提案することになっている。これまでの進捗状況から、本年度も予定通りに進むことが予想される。したがって、平成25年度は今年度以降の実用化に向けた研究継続を視野に入れて、知的財産権を得るための努力を行う。このために、特に真空中での実証試験を重ねて、超潤滑現象の発現メカニズムの補強を行うとともに、知的財産を得るためのデータとする。 CVDダイヤモンドの平滑化に関しては新たなアイデアが必要な段階にあり、難航が予想されるが、これまでの経験や外国の情報を集めて目標に近づける予定である。 今年度が最終年度でもあり、知的財産を考慮しながら、研究発表や投稿を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は最終年度でもあり、予算50万円のうち、主要な約30万円は3名の研究者の打合せ、研究発表、投稿などに関わる費用である。そして、約20万円を試験実施のための消耗品入手に使用する予定である。
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