研究課題/領域番号 |
23560174
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研究機関 | 宇部工業高等専門学校 |
研究代表者 |
後藤 実 宇部工業高等専門学校, 機械工学科, 准教授 (00435455)
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研究分担者 |
秋本 晃一 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40262852)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | トライボロジー / 国際情報交流 / 表面・界面物性 / 薄膜 / ナノ構造 / 放射線X線粒子線 / フランス |
研究概要 |
平成23年度は、プラズマCVD法とマグネトロンスパッタ法の複合プロセスにより成膜した銅および銀を含有するダイヤモンドライクカーボン(DLC)薄膜の成膜を行い、それらの摩擦摩耗実験を行った。銅を含有するDLC(以下、Cu-DLC)は超高真空中および大気中における大きく異なる荷重条件下において摩擦界面にトライボフィルムが生成し、比較的低く安定した摩擦特性を示すことが確認された。ナノインデンテーションによる微小硬さの測定により、EDXレベルで酸化していない銅を主成分とするトライボフィルムの見かけの硬さは異なる摺動雰囲気・荷重条件下において殆ど一定であり、またその組成も摺動雰囲気の影響を受けないことが確認できた。従って、摺動雰囲気・条件に依存しないCu-DLCの摩擦特性は、安定した組成のトライボフィルムの生成が接触状態および真実接触部のせん断強度を安定化させるためであると考えられる。銀を含有するDLC(以下、Ag-DLC)は膜中のAg濃度によって膜の耐久性が異なり、過剰なAgの添加は膜の耐久性を損なうことを確認した。Ag-DLCをベアリング鋼球で摩擦すると、摺動相手材摩擦面にAgと炭素を主成分とするトライボフィルムが形成され、その摩擦特性は見かけの接触面圧に対して荷重依存性を示すことを確認した。ナノインデンテーションによる微小硬さ測定の結果、このトライボフィルムの見かけの硬さはCu-DLCの場合に生じるものの約半分以下の値であり、2種類の金属含有DLCの摩擦特性はトライボフィルムの硬さと摩擦特性の関係に対する重要な知見を含むものと考えられる。また、マグネトロンスパッタ法でSi(100)基板上に純銅薄膜の成膜を実施したが、摩擦実験に使用する機材が震災の影響を受けたため、その摩擦特性評価は次年度以降に行うこととした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は震災の影響で一部実験機材の使用に支障をきたしたが、次年度以降の実施項目との入替等を行うことにより研究の効率的な推進を図った。具体的には、超高真空機器を用いる純銅薄膜の摩擦実験を次年度以降に繰り越した反面、Ag-DLCの成膜実験および各種トライボフィルムのナノインデンテーション測定については次年度以降の実施項目を前倒しして実施した。従って、本研究期間が3年間であることを考慮すれば初年度の進捗状況は概ね順調といえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は、引き続き金属含有DLCの摩擦界面に生成するトライボフィルムの機械的性質のキャラクタリゼーション技術の確立に取り組む。また平行して、JAXA設備を使用した純銅薄膜の摩擦実験を行い、摩擦による純銅薄膜の結晶配向性の変化を明らかにしていく。また、次年度使用額が生じた理由は、年度を跨いでフランスECLにて実施したトライボフィルムのナノインデンテーション測定のための旅費の支出によって生じたものである。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の使用計画は、フランスECLにおけるナノインデンテーション測定のために必要な旅費や、JAXA設備による摩擦実験のための旅費、研究成果の発表のための旅費と参加費に充てるほか、試料調整のための材料の購入費、実験治具工具の製作費に充当する。また、次年度使用額は次年度予算と合算してトライボフィルムのナノインデンテーション測定のための旅費に充当する。
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