平成25年度は、プラズマCVD法とマグネトロンスパッタ法の複合プロセスにより成膜した銅および銀を含有するダイヤモンドライクカーボン(DLC)薄膜の摩擦摩耗実験を行い、摺動時の垂直荷重変化に対する摩擦係数の変化と接触電気抵抗の変化に注目して解析を実施した。大気中および超高真空中で安定した摩擦係数を生ずる銅を含有するDLC(以下、Cu-DLC)と銅を主成分とする真鍮球との摩擦試験を実施した結果、膜中に含有する銅と真鍮球との間の強い凝着により早期に膜が摩滅することが明らかになった。一方、銀を含有するDLC(以下、Ag-DLC)は、ベアリング鋼球と摩擦した場合には摩擦係数の荷重依存性を示すが、摺動相手材を真鍮球とした場合には摩擦係数の垂直荷重依存性は大きく減少することが確認された。Cu-DLCおよびAg-DLC両方とも安定した摩擦係数が得られるときにはそれぞれの添加金属元素を主成分とするトライボフィルムが形成されたときであるが、ナノインデンテーションによる硬さ測定の結果、Ag-DLC由来のトライボフィルムはCu-DLC由来のトライボフィルムの硬さの約2/3程度であることが明らかになり、トライボフィルムの硬さと比べて摺動相手材の硬さの割合が大きい方が摩擦係数の荷重依存性が現れることが明らかになった。 また、Ag-DLCはCu-DLCよりも低い接触電気抵抗値が得られるが、銀含有量が60at.%付近を境にしてそれ以上の含有量になると接触電気抵抗は大きく低下するが、膜の耐久性は大きく低下する。接触電気抵抗とトライボフィルムの接触面積の間には相関が認められ、見かけの接触面積が増加すると接触電気抵抗が低下することが明らかになった。 これらの成果はWTC2013等の国際会議やトライボロジー会議2013春東京等において国内外に向けて情報発信を行った。
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