研究課題/領域番号 |
23560176
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
土佐 正弘 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, 研究員 (20343832)
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キーワード | トライボロジー / 固体潤滑 / スパッタコーティング / 真空 / 高温 / 表面分析 / 珪素系酸化物 |
研究概要 |
大気雰囲気から真空中まで、また、室温から高温まで、摺動摩擦環境を大きく可変できる雰囲気中で、シリコン系酸化物(SiOx)コーティング膜の化学量論比xが摩擦係数に及ぼす影響を明らかにするべく、化学量論比を調整できるコーテイングシステムおよび温度可変トライボロジー評価装置を試作し研究基盤を整備した。まず、アルゴンガス雰囲気の分圧酸素ガス流量を微調整することによりステンレス鋼基板表面に珪素系酸化物をコーティングすることで化学量論比を変えながらシリコン系酸化物コーティング膜を精度良く作成することができた。さらに、作製したコーティング膜のトライボロジー特性を系統的に評価するために、室温から高温まで雰囲気温度を加年しながら摩擦荷重と摺動回数を変えながら摩擦係数のデータを取得できる測定器を試作した。この試作機は、バウデンレーベン型の試験器を加熱できるように改造したもので、コーティング基板を搭載したセラミック定盤背面からヒーターにより加熱し、測定部を断熱チャンバー内の最高温度が900℃まで上昇可能であることを確認した。また、表面化学組成、および、結晶構造について、走査型オージェ電子分光分分析器,およびX線回折装置等をそれぞれ用いて観察し、表面微小硬度についてはマイクロビッカース硬度計を用いて計測し、その結果、シリコン系酸化物潤滑剤コーティング膜の化学量論比が摩擦係数に及ぼすスパッタ全圧や酸素分圧等いくつかの重要な基本的知見を数多く収集することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スパッタリングアルゴンガス雰囲気の分圧酸素ガス流量を微調整することによりステンレス鋼基板表面に珪素系酸化物をコーティングすることで、化学量論比を変えながらシリコン系酸化物コーティング膜を精度良く作成することに成功するとともに、室温から高温まで雰囲気温度を制御しつつ摩擦荷重と摺動回数を変えながら摩擦係数のデータを取得できる温度可変トライボロジー評価装置を試作し、その装置性能を確認するなど、研究基盤を整備するとともに、さらに、シリコン系酸化物潤滑剤コーティング膜の化学量論比が摩擦係数に及ぼすスパッタ全圧や酸素分圧等いくつかの重要な基本的知見を数多く収集することができ、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
宇宙軌道上曝露試験により見いた出された酸化物系潤滑材料の潤滑性能についてそのメカニズムを明らかにするとともに、その知見を元にシリコン系酸化物をベースとする長期信頼性に優れた高性能軌道真空環境用固体潤滑剤コーティングの開発をめざすべく、酸化膜の組織や結晶構造ならびに結晶配向性について検討し、マクロ・ナノ構造及び膜の化学量論比が摩擦係数に及ぼす影響を明らかにするとともに、さらに、中長期的なメンテナンス簡便化をはかるべく、コーティング膜自体の剥離や下地基板材料との密着性の劣化が抑制できると期待される自己修復的な機能の付与をこころみ、表面偏析現象を酸化珪素潤滑コーティング膜に応用し、メンテナンスが容易な新規高性能珪素系潤滑コーティング膜を開発し、そのトライボロジー性能と自己修復性を確立する。
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次年度の研究費の使用計画 |
温度可変トライボロジー評価装置を用いて極限環境における摩擦試験により酸化珪素コーティング膜の耐摩耗性ならびに耐久性を総合評価し、最適化学量論比xを確立する。さらに、自己修復的な機能が期待できる表面偏析現象のコーティング膜への応用をはかる。この計画を推し進すすめるためには、高品位のシリコンターゲット材料、コーティングシステムの真空機器用消耗品費や真空機器としてのメンテナンス費である交換用機器部品、ならびに、トライボロジーや機械特性評価用の消耗品である計測ピン・プローブ類等があげられる。また、研究成果を発表するための学会参加費や旅費・宿泊費や論文投稿料も計上される。
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